5/16(土) 6:41
時事通信

世論追い風に野党攻勢 与党、さらなる遅れ懸念 検察定年延長
衆院内閣委員会に臨む森雅子法相=15日午後、国会内
 与党が目指していた検察庁法改正案の15日の衆院内閣委員会での採決が、野党の抵抗で断念に追い込まれた。

 野党は同改正案に反対する世論を追い風に勢いづいており、新型コロナウイルス感染症への対応が中心だった「コロナ国会」の風景は一変。与党は週明け以降の衆院通過を目指して仕切り直すが、厳しい国会運営を迫られそうだ。

 「内閣が検察幹部の勤務延長を認める場合、その基準の明確化が必要だ」。15日の内閣委では国民民主党の後藤祐一氏が、検察幹部の定年を延長する場合の客観基準を明示するよう、森雅子法相を執拗(しつよう)に追及。森氏は「具体的に全て示すことは困難だ」などと曖昧な説明に終始した。

 この後、立憲民主党や国民など野党は同日中の採決を阻止するため、武田良太国家公務員制度担当相への不信任決議案を提出。立憲の安住淳国対委員長は「安倍晋三首相も与党も立ち止まって考えてくださいというメッセージだ」と記者団に語った。

 野党の背中を押しているのは、SNSを含め反対の世論が急拡大したことだ。同改正案をめぐっては、ツイッターを中心に著名人が相次いで抗議。15日は質疑を中継する衆院のホームページにアクセスが集中し、一時、閲覧が不可能になるほどだった。

 想定外の展開に、与党が当初描いたスケジュールには狂いが生じた。自民党の森山裕国対委員長は15日、「ずいぶん審議は深まっている」と記者団に強調。同党は武田氏に対する不信任案を19日の衆院本会議で否決し、20日の衆院内閣委で同改正案を採決する構えだ。ただ、与党内にはさらなるずれ込みを危ぶむ声もあり、公明党幹部は「いよいよ泥沼になるかもしれない」と指摘した。

 一方、立憲の枝野幸男代表は15日、ツイッターで「皆さんのおかげで採決は阻止できた。最後まで最大限の努力を続ける」と強調。与党内でも石破茂自民党元幹事長らが同改正案の拙速な採決回避を求めていることを念頭に「心ある与党の議員に働き掛けてほしい」と呼び掛けた。

 首相は15日の参院本会議で、同改正案に関して「恣意(しい)的な人事が行われることはない」と主張し、重ねて理解を求めた。しかし、松尾邦弘・元検事総長ら検察OBが法相に対して改正案に反対する意見書を提出するなど、異論は強まる一方。野党は松本文明内閣委員長(自民)解任決議案の提出も視野に入れつつ、徹底抗戦する方針だ。 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200516-00000010-jij-pol