世界が新型コロナウイルスの猛威にさらされる中、5大銀行グループの2020年3月期連結決算は小幅減益にとどまった。しかしコロナ禍の影響が表れるのはこれから。21年3月期には取引先企業の倒産増大に備えた貸倒引当金が大幅に膨らみ純利益は2割超減る見通しだ。かつて銀行業界を苦しめた不良債権問題の再燃への警戒も強まっている。銀行経営は試練の時代に突入した。

 ◇急増する与信費用
 「むしろ今年度が正念場だ」。異例の電話会議形式で決算記者会見に臨んだみずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長は、新型コロナの影響について厳しい見方を示した。
 5大銀グループが20年3月期決算で計上した貸倒引当金などの与信関係費用は、計2600億円と11年3月期以来の水準に達した。ただ企業業績が急速に悪化し、21年3月期はここから倍以上への拡大が避けられない。三井住友FGだけで2900億円と6倍近くの計上を見込む。

 それでも「コロナの影響を予測するのは極めて難しい」(太田純三井住友FG社長)。中小・零細企業を中心に既に150社が新型コロナの影響で経営破綻し、経済活動の停滞を背景に一段の増加は不可避な情勢だ。
 ◇金融システムに圧力
 コロナ禍が及ぶのは中小企業だけではない。世界中のベンチャー企業への積極的な投資で急拡大を続けてきたソフトバンクグループは、世界的な株価急落を受け純損益が9000億円の赤字に転落する見通し。大手銀などからの借入額が約1兆5000億円に及ぶ巨大企業の先行きに暗雲が漂っている。
 またトヨタ自動車やANAホールディングス(HD)、三越伊勢丹HDなど、急激な需要の落ち込みに直面する大企業が手元資金の確保を急ぎ、金融機関に相次ぎ追加融資を要請。産業界全体が銀行への依存度を高めている。
 これに対し大手銀は「(取引先の)資金需要に対応するのが最大の使命」(亀沢宏規三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)。ただ企業の業績が一段と落ち込めば、融資する銀行自身の経営健全性に影響が及びかねないジレンマがある。「金融システムにかかるストレスは高まっている」。14日に講演した日銀の黒田東彦総裁は、銀行業界の先行きに警戒感を示した。

時事通信 2020年05月16日06時42分
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