政府が通常国会に提出している検察庁法改正案について、野党や左派マスコミが反対している。

彼らが「中立公正であるべき検察に対する政府の介入だ」などと叫んだので、
先週末、いわゆる「著名人」もツイッターで反対の声を上げる騒ぎになった。
だが、彼らは何か勘違いしているのではないか。というより、「ためにする」議論とはこのことだ。

そもそも、この話は検察庁法だけを改正するのではない。
自衛隊員や会計検査院検査官も含めて、国家公務員全体の定年延長や待遇改善のために、多くの関係法改正案がまとめて提出されている。

なぜ、国家公務員の定年を延長するのか、と言えば、民間と同じく年金支給開始年齢が引き上げられるからだ。

検察官だけ定年延長しないとなったら、彼らだって労働者なのだから、怒るだろう。
それはともかく、左派が騒いでいるのは、次のような理屈であるらしい。

「黒川弘務・東京高検検事長は『政権に近い』と言われている。1月末の閣議決定で、2月だった定年を8月まで半年間延長したうえ、
今度は法律まで変えてしまえば、いまの稲田伸夫検事総長が退官した後、黒川氏を後釜の総長に据えられる。
安倍晋三政権は自分の意のままに検察を動かそうとしているのだ」

これは一見、もっともらしく聞こえる。国会で野党に追及された大臣にも答弁の言い間違いがあったので「疑惑」に輪をかけた。
だが、根本のところが間違っている。

稲田検事総長の任期は、65歳の誕生日を迎える2021年8月までだ。

稲田氏が誕生日まで総長を務めれば、黒川氏の目はなくなる。検事総長は「就任2年(7月)で退任」という不文律があるらしいが、
左派マスコミが報じたように、本当に「法務検察も危機と思っている」なら、そんな慣例にとらわれている場合ではないはずだ。

そもそも、定年延長を定めた改正検察庁法案が今国会で成立したとして、施行されるのは「22年4月1日」である。
これは、検事長らにも適用される国家公務員法改正案の附則第1条で事前に決まっている。

そうだとすれば、黒川氏は改正法施行までには、65歳を過ぎて退任してしまうので、
いずれにせよ、総長就任の可能性はなくなってしまうのだ。つまり、検察庁法の改正と黒川氏の就任問題は、まったく関係ない。

大体、法律に基づく制度改革と検察庁人事の話をごっちゃにして議論する方がおかしい。
「一般には、法施行日のような細かい話は分からないだろう」とタカをくくって、左派が宣伝し、それに「著名人」が乗ったのだとしたら、実に残念だ。

かねて「著名人」には左派ファンが多いと知ってはいたが、私は「無垢な(?)彼ら」を操った野党やマスコミの方が罪深い、と思う。

私が新聞記者時代、法改正と聞いても、改正案の本文どころか、簡略化した要綱さえ読んだことがない記者がほとんどだった。
彼らの不勉強と紋切り型の記事に振り回される読者が気の毒になる。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。
政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/200516/pol2005160001-n1.html

【国家公務員定年延長問題】高橋洋一教授「党派超え長年議論を重ねた経緯、いまになって騒ぐのは唐突感がある」★2
https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1589533061/

前スレ https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1589612279/