0001砂漠のマスカレード ★
2020/05/16(土) 20:29:14.13ID:zIU6sFBk9都市の怪談は、その舞台となった場所のイメージが重要だ。「夜中に灯る電話ボックス」や「古い団地の廊下」が消えるのは、それにまつわる怪談が消えていくことでもある。
「踏切」もまた、失われつつある都市風景の一つだ。安全のため、往来をスムーズにするため、踏切を廃止しての立体交差化があちこちで進んでいる。
確かに、列車が目の前をゆくのを待ち続け、しばしば事故や自殺の現場となる踏切は、都市の効率にとっては無駄な要素だ。排除しようとする気持ちもわからなくはない。
ただ、そうした危険や無駄こそが、踏切をすこぶる怪談的な風景にしていたのだが。
事故多発スポットとして名高い、二つの踏切
JR中央線は、昔から人身事故が多いことで知られている。
その中でも事故多発スポットとして有名だったのが、西八王子と武蔵小金井にある某踏切だ。
現在はどちらも姿を消しているが、実家が八王子、高校が武蔵小金井にあった私は、そこにまつわる怪談の噂もふくめて、この二つの踏切をよく覚えている。
例えば西八王子の踏切については、こんな話が伝わっている。
自殺の名所だったこの踏切で、一人の男が電車に飛び込んだ。衝撃で体がバラバラになるという悲惨な死に方だったが、なぜか頭部だけがどこにも見当たらない。
後日、それは線路脇の高校のプールにて発見された。切断された勢いで飛んできた生首が、ぷかぷかと水上に浮かんでいたのである。それからというもの、水泳中の生徒が溺れるなどの怪現象が続出したため、プールは撤去されてしまった。
だから同校には、いまだにプールが設置されないままなのだという。
1980年生まれの私が物心つく頃にはささやかれていた、八王子市民なら誰もが知るメジャーな怪談……というより都市伝説である。
もっとも、これほどの事故なら(規制のゆるい昔なら)報道されているはずだが、いくら探してもそれらしき記録は出てこない。
踏切で事故が多発していたこと、その学校にプールがないことは事実にせよ、当該エピソードは事実無根のデマに過ぎないのだろう。
「深夜になると、あそこに首のない人影がぼうっと立つ、なんて噂がありますね」
現在そこは踏切を撤去し、跨線橋がかけられたため、往時のような事故・自殺は解消されている。
私も現場を訪れてみたが、やけに長く緩やかなスロープが印象的な橋だった。手すり上部も金網ではなく、とっかかりのないボードが嵌めこまれている。「絶対に飛び込ませない」という意志を感じさせる造りだ。
現在は厳重なフェンスやボードで囲われており、線路内に立ち入ることは不可能だろう
c吉田悠軌 そこでふと、乗ってきたタクシーの運転手さんから「線路の奥をよく見てください」と声をかけられた。
薄闇に目をこらすと、線路の向こうに、かつての踏切の残骸がひっそりと佇んでいるではないか。
「深夜になると、あそこに首のない人影がぼうっと立つ、なんて噂がありますね」
なるほど、現在のロケーションに合わせて、怪談も更新されているようだ。ただしひどくおぼろげな、記憶の残像を見ているような怪談ではある。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200516-00037757-bunshun-soci
5/16(土) 17:00配信