繁華街などにマスク姿の客が訪れ、静まりかえっていた街が動き出した。緊急事態宣言が39県で解除されて初の週末となった16日、各地の商業施設やテーマパークが営業を再開した。消毒の徹底を呼び掛けたり、入場制限をしたりするなど、感染防止への取り組みも続いた。


 福岡市・中洲で名物の焼きラーメンなどを提供する屋台「中洲十番」は、約40日ぶりに営業を再開した。カウンターには透明なアクリル板を設置。客同士の間隔を空けるため、いすも15脚から8脚ほどに減らした。従業員は訪れた常連客と「久しぶり」「元気しとった?」などと笑顔で言葉を交わした。

 同市によると、中洲や天神地区などには屋台が計約100店ある。しかし、緊急事態宣言が発令され、県が午後8時以降、飲食店の営業を自粛するよう要請したため、夜間営業が中心の屋台は休業を余儀なくされ、苦境が続いていた。

 この日、ラーメンを味わっていた同市中央区の会社員(44)は「頑張って耐えてきた屋台を応援できればと思って来た」と声を弾ませた。「中洲十番」の代表、田中博臣さん(46)は「再開できてほっとしている。早く日常を取り戻したい」と話した。

■百貨店で検温

 同市・天神の百貨店では、食品売り場を除いて休業していた岩田屋本店が全館で営業を再開。体温を自動で測定するカメラを設置し、37・5度以上の熱があったり、マスクをつけていなかったりする場合は入店を認めないことを伝える看板も置いた。こうした客の入店を断る場面もあった。

 4月9日から臨時休業していた北九州市の百貨店「井筒屋」も、小倉北区の本店と八幡西区の黒崎店の全館で営業を再開。両店では従業員がマスク着用を呼びかけ、持参していない人には1枚50円で販売するなどの対応を取った。

 ひ孫のランドセルを買いに本店を訪れた同市八幡東区の主婦(84)は「家の中ばかりで気持ちがうつうつとしていたので、気持ちが明るくなる」と笑顔を見せながらも、「マスクは手放さず、気をつけながら買い物を楽しみたい」と気を引き締めていた。

■HTBに1000人

 各地の観光地でも手探りで営業が始まった。

 長崎県佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」(HTB)は、感染対策のため入場者を県内在住者に限ったうえで、屋外の花壇や一部の園内施設で営業を再開。この日は約1000人が訪れた。来園者は、居住地がわかる身分証明を示したり、2週間以内に県境を越える移動をしていないことを申告する書面を提示したりして、ゲートをくぐった。夫と来園した同市の女性(65)は「感染には気を付けなければならないが、対策が取られているので安心感がある」。県外客への対応は、今後の状況を見ながら判断する。

 年間50万人超が宿泊する山口市中心部の湯田温泉では、現在も休業しているホテルや飲食店が多く、観光客の姿はほとんどなかった。山口県では累計で37人の感染が確認されているが、今月6日以降は新たな感染者は出ていない。ただ、国は県境を越える移動を今月末までは控えるよう呼びかけており、湯田温泉旅館協同組合の吉本康治事務局長(66)は「普段通りの営業に戻るには時間がかかる」と語った。

2020/05/17 12:22
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20200517-OYT1T50063/