世界保健機関(WHO)の年次総会が18日、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)の影響で、初めてテレビ電話会議方式で実施された。
発生国・中国の習近平国家主席は、WHOと自国の対応を自画自賛したが、米国のアレックス・アザー厚生長官は名指しは避けつつも中国とWHOを激しく批判した。
焦点だった台湾のオブザーバー参加は、中国の外交工作もあって見送られた。
世界全体で31万人以上の死者を出している「死のウイルス」をめぐり、さらに米中対立が鮮明になった。

 「中国は一貫して透明性をもって情報を提供してきた」
「テドロス・アダノム事務局長の指揮下、WHOは世界規模での対応に多大な貢献をした」

 習氏は総会初日のスピーチで、平然とこう語った。
新型コロナ対策で今後2年間、20億ドル(約2100億円)を拠出することも表明した。

 ドナルド・トランプ大統領率いる米国は「WHOは中国寄りだ」と批判し、資金拠出停止を表明している。
習氏の発言は、中国やWHOの初動対応の失敗や隠蔽疑惑を無視して、中国が公衆衛生分野で国際社会を主導する思惑をにじませた。

 当然、米国は黙っていない。

 アザー氏は「加盟国のうち少なくとも1つの国(=中国)が感染拡大を隠蔽しようとした」
「加盟国が誠実に行動しない場合、WHOは情報共有と透明性の確保という主要任務を果たすことができない」
「世界が必要としていた情報の入手にWHOが失敗したことが、感染が制御不能になった主要因だ」と、中国とWHOを痛烈に批判した。

資金拠出についても、アザー氏は米国際開発局(USAID)などを通じて国際的な新型コロナ対策を支援するため、米国は90億ドル(約9650億円)の支援を決定していると強調した。

 一方、日本や米国、欧州各国など求めた「台湾のオブザーバー参加」の提案は、会期を短縮(=19日までの2日間)して議題も絞り込んだため、審議は棚上げとなった。
世界の公衆衛生や防疫メカニズムに抜け穴があってはならないが、台湾は4年連続で出席できなかった。

 中国が「台湾は中国の一部であり、WHOに加盟する資格がない」と激しい外交工作を展開し、アジア、アフリカ、中南米の多くの国が反対姿勢だったという。

 台湾当局は18日、「WHOが中国政府の干渉と圧力に屈服した」と強い不満を示した。

 日本は欧州連合(EU)などと共同で、新型コロナ対応をめぐり、「独立した検証作業」を適切な早い時期に始めるようテドロス氏に求める決議案を提出。
テドロス氏は総会での演説で応じる考えを示した。

 新型コロナを受けて、世界の枠組みは大きく変わりそうだ。
「米中新冷戦」も指摘されるなか、日本の姿勢と覚悟が注目されている。

zakzak 2020.5.19
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200519/for2005190006-n1.html