検察庁法改正案に対する国民の不満が高まっていた中で発覚した検察ナンバー2、黒川弘務東京高検検事長のスキャンダル。法務・検察内からも、捜査への影響を懸念する声が聞かれた。

 「本当にみっともない」。ある検察幹部はため息をつく。黒川氏の定年延長の必要性について、森雅子法相は検察庁法改正案の審議を巡る国会答弁で「黒川氏の経験、知識に基づく部下職員への指揮監督が必要不可欠」と説明してきた。「外出自粛要請中にパチンコ店に行列を作って批判された人たちと同じようなものだ。自粛するよう部下に指導する立場にあるはずなのに」と憤る。

 黒川氏は、2010年の大阪地検特捜部による証拠改ざん事件後、検察の立て直しに尽力し、法務官僚として手腕を振るった。「組織に貢献してきた事実は消えない。全否定はできない」との意見もあるが、ナンバー2の不祥事は組織全体の信頼低下にもつながりかねない。別の検察幹部は「市民の信頼を失えば捜査への影響は大きい。容疑者や参考人が呼び出しに応じなくなることも想定される。抗議の電話も殺到するだろう」と頭を抱える。

 賭けマージャンが事実であれば、刑法の賭博罪(法定刑は50万円以下の罰金または科料)や常習賭博罪(同3年以下の懲役)に問われる可能性もある。

 黒川氏は辞職を決断後、報道陣の問い掛けに無言を貫いた。周辺には20日深夜、「身から出たさびだ」と漏らしたという。【志村一也、国本愛】

毎日新聞2020年5月21日 21時21分(最終更新 5月21日 21時21分)
https://mainichi.jp/articles/20200521/k00/00m/040/237000c