2020.5.25 08:00
https://www.sankei.com/smp/premium/news/200525/prm2005250006-s1.html

 今年1月、大阪市内の民家に男らが侵入し、住人の高齢女性を脅して現金やキャッシュカードを奪う強盗事件が発生した。大阪府警に逮捕されたのは少年ら3人。当初は仲間内の犯行とみられていたが、実はSNS(会員制交流サイト)などで強盗に誘われ、事件まで互いに会ったことすらなかったことが判明した。府警はほかに首謀者がいるとみて捜査。SNSで実行犯を募る手法は特殊詐欺でみられるが、こうしたグループが強盗に移行しているとの見方もある。

 大阪市東淀川区の民家に少年らが押し入ったのは1月14日未明。住人の70代女性を「殺すぞ」などと脅し、女性の脇腹を殴ったり、両手足に粘着テープを巻き付けたりした。

 少年らは家にあった現金約40万円とキャッシュカードを強奪。さらに女性から暗証番号を聞き出し、カードで100万円を引き出した。女性は打撲などのけがを負った。

 悲鳴を聞いた近所の人からの通報で府警は緊急配備を敷き、間もなく逃走中の少年A(18)を強盗致傷容疑などで逮捕。その後、2月までに別の少年B(19)と男C(22)を同容疑で逮捕した。

 民家に押し入った3人の強盗犯は全員が逮捕されたが、その後の捜査で判明したのが、彼らの想定外の“つながり”だった。

 現金を奪う現場にいる人間は使い捨てで、首謀者は別にいる。この構図は、高齢者宅を訪問し、現金を受け取る「受け子」などをSNSで募集する特殊詐欺グループと同様だ。ある警察幹部は「特殊詐欺グループが強盗へシフトしている」との見方を示す。

 何百何千と電話を掛けて高齢者をだます特殊詐欺は、受け子以外にも電話をかける「かけ子」などの人手が必要で、拠点も作らなければならない。この手間を省くため、即席で強盗団を作り、現金を奪わせたり、暗証番号を聞き出したキャッシュカードで金を引き出させたりした方が手っ取り早いというわけだ。

 犯罪心理に詳しい奈良女子大の岡本英生教授は「高齢者の特殊詐欺への警戒感が高まり、成功率も低くなっている。今後、強盗事件が特殊詐欺のように増加してもおかしくない」と指摘する。詐欺とは違い、直接被害者に暴行や脅迫を加える強盗は、大きなけがや命の危険もあり、警察は警戒を強めている。