かんぽ生命保険と日本郵便による保険不正販売に絡み、熊本県内で、顧客の知らないうちに保険を利用した「契約者貸し付け」が繰り返されていた疑いのあることが26日、分かった。顧客は「何ら身に覚えがない」としており、新たな不正行為の可能性がある。

 被害を訴えるのは、熊本市で美容室を営む60代の夫婦。1989年10月、月1万5千円を20年間払い込み、満期に500万円と配当金を受け取る養老保険に2口入った。20年後の2009年10月に合計1千万円と配当金22万円を受け取るはずだったが、実際は計551万円だった。

 昨年始まったかんぽ生命の不正調査をきっかけに、夫(63)が資料開示を請求。それによると、01年以降、養老保険を利用して8万〜100万円の借り入れが繰り返されていた。特に妻(69)の養老保険では06〜07年に少なくとも13回、9万〜29万円の借り入れがあった。一方、弁済は一部にとどまっていた。

 満期時、熊本中央郵便局の担当者が自宅まで保険金を現金で持参。額が少ないと思ったが、担当者は「これだけ残ったのだから良い方ですよ」と話し、リーマン・ショック後だったこともあって、いったん納得したという。

 この時、夫は勧誘されるまま442万円を一括で支払い、年間46万円ずつを10年間受け取る年金保険に新たに加入。ただ、開示資料では、この保険でも知らないうちに計60万円を借り、全額返済したことになっていた。ほかにも、1999年に妻名義で契約され2005年に解約された身に覚えのない養老保険の記録や、「夫の字とは違う」筆跡で書かれた貸し付け請求書もあった。

 夫婦は「どれも全く記憶にない。気持ち悪くて頭の中が真っ白になった」と訴える。

 かんぽ生命に問い合わせたが、「記録がそうなっている」の一点張り。業務上横領や詐欺の時効(7年)は既に経過し、警察も捜査は難しいという。夫婦の依頼を受けた河内博幸弁護士(熊本市)は「開示資料の金の出し入れは不自然で、疑問がある」として、民事で真相究明と責任追及を目指す。

 日本郵便九州支社は、個別の案件や類似案件の有無は「答えられない」とした上で、「内部調査は今も進めており、法令や社内規定違反が確認されれば厳しく対処する」としている。(太路秀紀)

5/27(水) 10:53配信
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