2020.5.27
 ブドウの「シャインマスカット」やイチゴの「あまおう」を手掛ける農家が怒っている。国内で開発された果物や野菜の「登録品種」について種苗の不正持ち出しを禁じる種苗法改正案をめぐり、野党やSNSで反対論が噴出、女優の柴咲コウ(38)もツイッターなどで疑問を呈し、話題になった。自民党からも見送り論が浮上するが、貴重な国産品種の海外流出を見過ごしていいのか。



 種苗法改正案では、登録品種(別表)の不正な持ち出しについて刑事罰や損害賠償の対象とすることが可能となる。

 農家が次期作のために種苗を「自家増殖」する際に、育成権者らに許諾料を支払う必要が生じることで、「農業経営を著しく圧迫する」と野党などが反対。柴咲も《このままでは日本の農家さんが窮地に立たされてしまいます》とツイートし、その後削除した。

 「外資に農業が乗っ取られる」と陰謀論まがいの説も出るなかで、自民党の森山裕国対委員長は法案成立を見送る可能性に言及した。

 日本品種の海外流出問題は深刻だ。2018年2月の韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪では、カーリング女子日本代表の選手が韓国産イチゴを食べたことが話題となったが、斎藤健農水相(当時)は「以前に日本から流出した品種を基に、韓国で交配されたものが主だ」と指摘した。

 江藤拓農相は今月22日の記者会見で「5年間で200億円を超える遺失利益が計算されている」として一刻も早い法改正を訴える。

 長野県で「シャインマスカット」を栽培するブドウ農家は「枝を接ぎ木すればいくらでも増やせ、外国に流そうと思えば簡単にできる上、逆輸入の恐れもあり、いいモノが作れなくなる」と声を上げる。

 福岡県で「あまおう」を栽培するイチゴ農家は、「海外からの誘いに乗り、郷土愛が薄れた人がビジネスに流れるモラルの低下もある。農業の技術を守るという目的を伝えてほしい」と嘆く。

 識者はどうみるのか。

 農業の知的財産権に詳しい東京理科大学専門職大学院教授の生越由美氏は、「自家増殖は農家にとって1万年前からの文化だが、善良な農家を含めてルールを一律に変える点に反発が出たのではないか。国外への不正流出を防ぐには韓国や中国などで育成者権を登録したり、税関のチェックを強化するなどの議論が本質的かもしれない」と解説する。

 国内の規制が重要だと強調するのは専門誌『農業ビジネス』編集長で、ジャーナリストの浅川芳裕氏。

 「登録品種について契約して許諾料を払っている農家は多いが、法律の抜け穴で種苗が違法コピーされるケースが野放しになってきた」として、法改正を急ぐべきだと主張する。

 「種苗法は、ほかの知財関連の法律に比べて厳罰化などの整備が遅れている。国内の自家増殖を管理することで、副産物として海外への流出ルートを抑える形にもなる」と指摘した。

 日本の農業を守るための改革が必要ではないか。

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