東京在住ではないが、東京の朝の通勤ラッシュに居合わせたことがあり、何度か電車に乗ったことがある。
押されたら押し返すような、やられたらやり返すようなタイプではまったくなく、ふだん自己主張はなるべくせず、だれにもよくも思われないよう悪くも思われないようにおとなしく目立たぬようにしていたい──が信条の自分である。
ぎゅうぎゅうのおしくらまんじゅう状態の車内で、まるでサーカスの演技でも無理矢理させられているかのような体勢になり、四肢がばらばらになるのではないかの痛みと息苦しさでもう死にそうだった。
口でいいはせずとも「おい、くっつくな」「向こうへいけ」と自分のポジションを守りつつ、強く押し返すぐらいでなければとても東京の満員電車など乗れないとわかった。
地方の電車通勤などかわいいものである。
また。駅でのこちらに突き刺さるかのように歩いてくるひとの多いことには驚いたし、それを目の当たりにするだけでへたへたと精神エネルギーが吸い取られていきそうだった。