「菜の花畑に到着いたしました。香りをお届けできないのは残念ですが。では、3、2、1」

 それまでガイドの女性を映していたパソコン画面が、一面に黄色の菜の花畑を映し出す。インターネットの中継を通じて画面を見ている十数人の参加者からは「おおっ」と、歓声が上がった。

 5月30日、北海道・十勝地方を中心に先駆的な農場ツアーを行っている体験型観光会社「いただきますカンパニー」(帯広市)が、音更町の菜の花畑で試験的に行ったオンラインによるツアーの一コマだ。

 現場にいる「畑ガイド」が映像を映しながら、1時間ほど、菜の花畑の所有者一家が入植したときのエピソードや、「畑作4品」を輪作する十勝農業の特徴、菜種油を作る方法などを解説した。


 参加者たちとはチャットやマイク機能で会話を交わし、双方向性を確保した。「子どもの目線で畑を見せて」などのリクエストにも応え、低い位置から菜の花畑を映した。スクリーンショット機能を使い、自分の顔が写った画面と菜の花畑の映像を重ねた「記念写真」の時間も設けられた。

 「いただきますカンパニー」は普段、体験型の農場ツアーを提供している。「畑ガイド」が参加者を連れ、ジャガイモやトウモロコシ、小麦畑など、季節に応じた畑を散策する。十勝産小麦のパンをチーズやオイルにつけて食べる「パンベキュー」など、畑で採れた作物や加工品を現場で食べる体験も行っている。昨年は首都圏のファミリー層や外国人を中心に、約2千人が参加した。

 だが、今年は新型コロナウイルスの影響で、毎年5月から始まるツアーは断念し、7月17日までの休業を決めた。雇用調整助成金は申請しているが、野外活動のため、休業協力金は対象外だったという。

■事業者が団結 「ノウハウ共有…(以下有料版で,残り802文字)

朝日新聞 2020年6月13日 7時00分
https://www.asahi.com/articles/ASN685VQCN61IIPE01M.html