6/14(日) 10:24配信
西日本新聞
設置業者は人手不足、感染対策も苦慮

在宅勤務の増加などで好調な今季のエアコン需要=3日、福岡市博多区のベスト電器アウトレット博多店

 新型コロナウイルス対策として在宅勤務が広がったことで、エアコン需要が高まっている。家電量販店などでは例年より約1カ月早い5月から売り上げが増加。梅雨時期や夏場も自宅で長い時間を過ごすことを想定し、早めに準備する人が増えているという。一方、コロナ禍で人員が減った設置業者は一転、受注が急増し人手不足に。感染防止と熱中症の二重の対策を強いられ、不安を抱えながら作業に当たっている。

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 「販売台数上昇のスタートダッシュが早かった」。ビックカメラ天神2号館(福岡市)スタッフの金子美咲さんは、いつもなら6月から伸び始めるエアコン需要が1カ月前倒しされたと感じている。エアコンと合わせ、空気清浄器や扇風機、空気を循環させるサーキュレーターの販売も好調という。ベスト電器アウトレット博多店(同)の島田憲隆副店長(49)は「少し高くても空気清浄機能付きエアコンを求める人が多い」と話す。

 売り上げの増加は長崎市などの電器店でも見られ、5月の売り上げが前年同期を上回った大分市の電器店は「在宅勤務の導入で家での時間が増えたことが大きい」と分析する。

 パーソル総合研究所(東京)が4月中旬に実施した全国調査では、在宅で働くテレワークをしている正社員は27・9%で前月からほぼ倍増。福岡県も23・8%で前月の2倍超となった。ビックカメラによると「広い部屋用のエアコンは持っているが、書斎など仕事用の別の部屋にも付けたい」「テレワークなどで自宅にいる時間が増えた。省エネ機能がある製品を」といった声が聞かれるという。

 好調な需要に設置現場は複雑だ。エアコン取り付け業者のブラッサム(福岡市)は、コロナ禍で4月の売り上げが通常の約5分の1まで落ち込み、従業員が8人から3人に減った。だが、5月の大型連休明けから受注が急増。柴藤栄作社長(49)は「人員が少なくきつい。作業員の求人をかけてもなかなか集まらない」と話す。

 人と接する現場でマスク着用は欠かせないが、炎天下の作業もあり、体温の上昇を招き、熱中症のリスクを高める恐れも。家ごとに靴下をはき替えたり、消毒液で現場を拭き上げたりするなど、通常は必要なかった作業の負担も大きい。取り付け業者glow(グロウ)=福岡県春日市=の古賀直樹代表(38)は「マスクでの作業のため作業員は汗だく」と不安げ。夏場の需要増に備えるため、新規に2人を採用した。

「換気、暑い中どこまで」利用者に戸惑いも
 熱中症対策に欠かせないエアコンだが、初めて迎える「コロナの夏」を前に、感染防止対策の換気とどう両立させるか、戸惑いも見受けられる。福岡市内の家電量販店のエアコンコーナーにいた60代の夫婦は「部屋を涼しくしたいが、換気はするしかないかな。しょうがない」と複雑な表情を見せた。

 室内環境に詳しい大阪大の山中俊夫教授(建築環境工学)は「ほとんどの家庭用エアコンは、室内の空気を循環させるだけで空気を入れ替えておらず、換気機能はない」と指摘。その上で「(自宅に)24時間機械換気設備があれば一定の換気量は確保されているが、ない場合は、温度上昇しないよう気を付けながら、たとえ数センチ程度の窓開けでも換気効果はある」と語る。

 日本救急医学会や日本感染症学会などは、コロナの流行を踏まえた熱中症予防に関し「感染予防のため夏でも換気は必要だが、それによる室温上昇も懸念される。直射日光を避け、部屋の温度を小まめに確認することが重要だ」と提言している。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/147f562d6386ff87cbaa4c50273ad3d75560606f