★没収相次ぐ? 1万円の納豆生涯無料パスポート、適正価格は何円?
2020年06月19日 07時00分 公開
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2006/19/news026.html

※一部抜粋、全文はリンク先へ。見出しのみは全て略

 1万円で納豆ご飯定食が生涯食べ放題――。

 ちょうど1年前、茨城県の納豆ご飯専門店「令和納豆」がクラウドファンディングを通して1000万円以上の資金調達に成功した。
その立役者は、何といっても1万円以上の支援で配布された「納豆定食生涯無料パスポート」にあるだろう。
しかし先月から、「無料パスが没収された」という旨の苦情がSNS上で炎上し、店舗側がその対応に追われている状況だ。

 確かに、クラウドファンディングに際して、令和納豆側は「無料パスで経営が傾くことはない」という趣旨の投稿をしていた事情もある。
しかし、コストとリターンのバランスを考えると、無料パスは「見えている地雷」であり、避けるべき案件であることが明白であった案件であると筆者は考える。

 そこで、今回は無料パスにおけるコストとリターンの適性バランスを分析し、その適性価格はいくらだったのかを検討していきたい。

■無謀な利回り

 筆者は、「納豆定食生涯無料パスポート」が“HYIP”に近い性質だったと考える。HYIPとは、「High Yield Investment Program」という詐欺のひとつだ。
HYIPの勧誘文句としてよく用いられているのは「日利で1%が手に入る」といった、あり得ないレベルの利回りを投資家に提示する。

(略)

 それでは、無料パスの“年利”はいくらだろうか。無料パス取得に必要な支援額は1万円だ。
そして、この無料パスを使えば500円の納豆定食を1日1食、生涯無料で食べられる。つまり、本件は「日利5%の投資案件」という見方もできる。
ただし、納豆定食は「複利」ではなく、同額のリターンを継続的に得られる「単利」となる。
それでも365日無料で納豆定食を食べ続ければ、1万円に対して20万円以上のリターン、年換算で2000%以上の利回りを享受できてしまう。

 これがお金の貸し借りの話であれば、そのような話に応じる者はいないだろう。
「1万円貸してくれたら来年から毎年20万円振り込む」という言葉を信じてお金をだまし取られた場合、大抵は「そんな言い分を信じる方が愚かだ」と言われるはずだ。

 ただし、令和納豆が詐欺行為を働いたかといえば、それはまた別の話になる。事業を開始してから冷静に再考した結果、
「1万円で1099人に納豆定食を生涯提供し続けることはそもそも難しい」と気づいたのかもしれない。
無料パスによる経営破綻を避けたいがために、一部の顧客から無料パスを没収したことが今回のトラブルにつながってしまった可能性がある。

 それでは、リターンを継続的に得られる性質のクラウドファンディングにおいて、安全なリターンの目安はどのように見極めるべきだろうか。

■安全水準は“粗利”から考える?

■結局、無料パスの適正価格はいくらなのか?

 これを令和納豆の事例に当てはめると、無料パスの適正価格は次のプロセスで決定されるべきであったと考えられる。

 まず、飲食業の粗利率が60%から考えると、無料パスの年利は友の会の事例を参考に、粗利率の60%を超えない範囲で提供されるべきだろう。
次に、パス保有者が平均して何日に1回利用するかを想定すべきであった。最後に、パス保有者の平均利用年数を想定すべきだ。

 具体的な数値を仮定しつつ当てはめてみよう。平均して、無料パスが「7日に1回」利用されると仮定すると、顧客が年間に享受する納豆定食の累計は2万6071円相当となる。
ここから、無料パスの1年あたりの適正価格は2万6701円の粗利率60%を超えない1万6201円以上となる。最後に平均利用年数を「30年」と仮定する。
その結果、「納豆定食生涯無料パスポート」の適正価格は48万6030円となる。

 パラメーターとなる数字の置き方にもよるが、ある程度保守的に見積もっても無料パスは数十万円を下らないだろう。
そんなパスポートを1万円で提供している時点で、やはり「没収」抜きで持続可能な制度にすることは不可能だったといっても過言ではない。