島で出会った頃のカネキとマイケル。2匹はいつも一緒だった(芋子さん提供)

 片目の白猫、カネキは、鹿児島県の沖永良部島(おきのえらぶじま)で地域猫として生きていた。「カネキ」という名前は、世話をしていた居酒屋のマスターが名付けた。人懐っこく警戒心のないカネキと、相棒の茶トラ猫「マイケル」は、地域のマスコット的存在だった。

 2019年10月、姉妹は住み込みのリゾートバイトのため、実家のある関西から沖永良部島へ引っ越してきた。「寮に着いた日、荷ほどきをしていたら猫が部屋の中に飛び込んできたんです。そのまま我が物顔でくつろぎ始めたので驚きました」。それが、芋子(いもこ)さん姉妹とカネキの出会いだった。

 マイケルとカネキは、毎晩寮の隣の居酒屋でご飯をもらうと、姉妹の部屋に立ち寄ってベッドで眠った。ところが、ある日を境にカネキだけが姿を現さなくなった。心配しつつも4日ほどすぎたある日の深夜、ドアの方から聞き慣れた鳴き声が聞こえた。

「声ですぐにカネキだ!とわかって、扉を開けると顔中血だらけで座っていたんです」。姉妹の妹、芋子さんはすぐにカネキを部屋に入れ、怪我の様子を見た。

 あごが曲がった状態で口から血を流し、もともとなかった片目も膿んでひどい状態だったという。

 怪我をしているのは顔だけだったが、痛みのせいか、カネキはひどく弱っていた。

「離島なので、動物病院がないことは聞いていたんです。でも、このまま放っておいたらカネキは死んでしまう。私たちは猫を飼ったこともないのでどうしていいかわからず、ツイッターで助けを求めることにしました」。

 芋子さんが負傷したカネキの画像と様子をツイートすると、またたく間に猫飼いたちからのアドバイスが寄せられた。同時に、島で猫の保護活動をしている人とつながり、翌日に隣の島の動物病院まで連れて行ってもらえることになった。

 診断結果はあごの粉砕骨折。車との接触事故だろうということだった。念のため血液検査も行なったが、怪我以外に異常はなく、推定年齢6歳の健康なオス猫と診断された。

 とはいえ、自力で食事ができず投薬も必要な状態だったカネキは、気ままな野良生活には戻れなかった。姉妹はリゾートバイトで島にいる間、ツイッターと保護活動をしている人の力を借り、カネキの世話することに決めた。

 ツイッターに診断結果を報告すると、通院や手術する場合の医療費を寄付したいと申し出があった。「同じ怪我をした猫ちゃんの飼い主から手術費用を聞いて、そんなにかかるんだ!と。カネキを助けたい思いで寄付を呼びかけると、たくさんの方が協力してくれ、最終的には334,500円もの金額が集まりました」。

 芋子さんは、支援してくれた人にカネキの様子を知らせるため、YouTubeに動画を投稿している。もともと警戒心が薄く、人間の前で堂々とくつろぐカネキだったが、怪我をして保護した時はケージの隅でうずくまっていることが多かった。

 怪我も完治し飼い猫になった現在は、再び姉妹のひざやソファで“ヘソ天”姿を見せ、大胆にくつろぐようになったという。動画の中のカネキは、初めて手に入れた“我が家”を満喫しているようだ。

 東京に来てからのカネキの変化を聞くと、「保護当時は3キロだったんですが、今は4キロになりました。持ち前の愛想の良さでいろんな人に餌をもらっていたので、もともと野良にしては大きかったんですよ。今も、ご飯をあげたのにもらっていないという顔でねだるので、私も姉も困っています」と芋子さんは笑う。

 命の危機にあったカネキはあの夜、自分を家族に迎えてくれる2人を選んで現れたのかもしれない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/426aaa24946dcb2c8ac58a825441023db0eafba0
人懐っこいカネキは、地域猫時代から警戒心が薄かったという(芋子さん提供)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200627-00010001-sippo-life.view-002