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毎日新聞

街を歩けばピンとくる? 年間バス代、長崎市1位 「独走」する理由
長崎市内の高台を走るバス。坂の多い長崎市では公共バスは重要な市民の足のひとつ=徳野仁子撮影
 年間約700万人が訪れる長崎市。街中で目に触れることが多いのは観光客にも人気の路面電車、そして市民の足として山間部まで運行しているバスだ。総務省の家計調査で、長崎市は1世帯で支出した年間のバス代が2011年から19年まで連続1位となっている。街を回ったことがある人ならその理由はピンとくるだろう。

 家計調査の「バス代」は、2人以上の世帯が路線バスのほか高速バス、深夜バスも含めて1年間で支出した金額。世帯によって年齢の偏りがあることなどから3年の平均値を算出している。家計調査を基にした長崎県統計課の18年の家計消費概要によると、交通費(支出金額)で長崎市がバス代で全国1位、タクシー代が同3位の理由として「坂や階段が多い地形であるためと思われる」とみている。長崎港を中心にすり鉢状の地形をした面積約406平方キロメートル、人口40万7918人(5月1日現在)の長崎市。市街地の7割が斜面地だからではあるが、分析まではしていないという。

 県内の約3分の1に相当する事業用バス約550台を保有する長崎自動車(長崎市)によると、地形の次に挙げた要因は「電車や自転車の通勤、通学が少ないからだ」という。県バス協会の峯比呂志専務理事も「坂が多いから自転車が使えないのは大きい。佐世保市もそうだが、自転車が走っていない。福岡や佐賀などと違って高校生で自転車通学している人が少ない」と指摘する。

 確かに、自転車の保有数を都道府県別にみても長崎が1世帯当たりで0.55台と全国最少(18年自転車産業振興協会調べ)。自転車の安全を啓発する民間の有識者団体「自転車の安全利用促進委員会」によると、長崎は16年から3年連続で高校生1万人当たりの通学時自転車事故件数が全国一少ない。

 関係者の話を総合すると、長崎市はJRや中心部を走る路面電車もあるものの、自転車も多く電車や地下鉄がある福岡市(バス代の支出金額は全国7位)と違い、目的地付近まで乗り換えずに行くにはバスに頼る割合も多くなってしまうのだという。

 その分、サービス面でも力を入れている。長崎バスを運行する長崎自動車は、割高感をもたれないよう全国で最も安い長崎電気軌道の路面電車(130円)も意識して初乗り運賃は160円。1キロ当たりでは九州でも安い27円で運行している。また、増える免許返納者がバスを利用しやすいよう「乗り方講座」なども実施している。人口減と高齢化が進む中、長崎市民のバス利用の頻度に大きな変化はなさそうだ。

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