7/5(日) 9:02
AFP=時事

アンテロープを食用に コロナで観光客激減し困窮 南ア
アンテロープ(2020年1月25日撮影、資料写真)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】いつも通りパンと野菜が入った箱を積んだ慈善団体のピックアップトラックが、南アフリカのある町にやって来た──今日は、50キロ以上の新鮮なアンテロープの肉という貴重な食料も載せている。

 このアンテロープは、野生動物の狩り場を観光客に提供する農家らによって数日前に射殺されたものだ。農家らの観光ロッジは、新型コロナウイルスの感染拡大防止策としてロックダウン(都市封鎖)が始まった3月に閉鎖された。
「最後に肉を買ったのがいつだったか思い出せない」と、住人のテボゴ・マブンダ(Tebogo Mabunda)さん(40)は喜びのあまり叫ぶように言った。
 町では普段、マブンダさんのような非公式労働者(インフォーマル・ワーカー)が多数、ロッジやスパで雑用の仕事をし、どうにか暮らしている。だが、3月に観光業が停止して以来、仕事がなくなってしまった。
 家族4人を養っているマブンダさんだが、いまやせっけんや主食であるトウモロコシの粉も満足に買えない状況だ。
 地元でスーパーを経営するピートさん(仮名)は、食べ物の寄付を求める人が増えていることから、自身が所有する食肉処理場で野生動物の取り扱いを始めた。「ある日、狩り場を提供する農家たちと狩りに出かけた時に、これ(獲物)をどうするんだと思った」ことがきっかけだったという。
 ピートさんは、地元の観光ロッジに動物の死骸を自分の店に寄付してくれるよう頼んだ。慈善団体のつながりを通じて、過去2か月で1.5トン以上のアンテロープの肉を配布したという。
 ピートさんは「ここは貧しく、経済は破壊されてしまった…その上、食べていかなくてはいけない」と言った。「主な収入源は観光業だったが、それもいまや全くなくなってしまった」
■明らかに飢えが理由
 猟師のパットさん(仮名)が、1頭で行動していた雄のインパラの両目の間をライフルで撃ち抜くと、インパラは地面に倒れ込んだ。
 パットさんはたばこに火をつけ、家族が所有する200ヘクタールほどの土地を見渡す。ここは観光客がにぎやかな都会から離れて休息し、ロッジの窓から野生動物を目にして感動する場所だ。
 パットさんの父、コーンラッドさん(仮名)は、地元の人々が飢えないよう、普段の倍以上となる100頭のアンテロープを狩ることに決めた。
「ロックダウンの開始直後から問題が表面化した」とコーンラッドさんは語る。近隣の農園では、動物が食用目的で密猟されていると付け加えた。飢えが理由なのは明らかだとコーンラッドさんは指摘する。「この町は既に危うい状況にあった。新型ウイルスの発生がそれに拍車をかけた」
 33人いた従業員のうち、現在も働いているのは4人だけだ。コーンラッドさんは全員に給料を払い続けているが、解雇の予定があることを認めた。「われわれはかなりの打撃を受けた」「売り上げはほとんどゼロだ」と語った。
 南アフリカでは、国内観光の再開は12月を予定しているが、外国からの観光客の受け入れは2021年になる見通しだ。
 ロッジに戻ったパットさんは観光客がいなくなって良かったたった一つの点は、野生動物の狩りに余裕ができたことだと語る。「観光客は狩りを好まない」とパットさん。「普段はこそこそしている…今は堂々とできるようになった」 【翻訳編集】 AFPBB News

https://amd.c.yimg.jp/im_siggtdblrDmWO_Y9rETAt4SDpw---x900-y600-q90-exp3h-pril/amd/20200705-00000002-jij_afp-000-1-view.jpg

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200705-00000002-jij_afp-int