0001豆次郎 ★
2020/07/05(日) 21:17:46.29ID:rgg05V9p92020.7.5 20:10 産経WEST
夜間に勢いを増した雨、逃げる間もない速さで押し寄せた濁流。熊本県南部を襲った豪雨の被災地では、濁流で道路が分断されて避難がままならず、今も救助を待つ人がいる。一方、命からがら避難所にたどり着いた人々は、無事の再会を喜び合った。
■助けに行けず…
隣人が屋根の上で1人、助けを待っている。そう聞かされても、腰の高さまで迫る激しい濁流で歩けなくなった市街地を前に、ただ無事を祈るしかなかった。
球磨(くま)川沿いを中心に、甚大な被害が出た熊本県人吉(ひとよし)市。下林町の高校教員、村上崇さん(43)は4日午前5時ごろ、「ゴー」という轟音(ごうおん)で目が覚め、同居する母(79)とともに、車で避難所となった「人吉スポーツパレス」に向かった。
無事に到着後、ほどなくして隣人の自営業、堀川美智さん(83)が屋根の上で助けを待っていると聞き、慌てた。平屋建ての家に1人で暮らす堀川さんには、時々食事を届けたりしてきた。いつも元気な堀川さんだが、平屋の家では「垂直避難」も難しい。
助けに行こうと考えたが、乗ってきた車はすでに水につかっており、市街地は歩ける状態ではなくなっていた。「大丈夫だろうか」。ただただ無事を祈り、時を過ごした。
■わずかな時間が
そのころ、堀川さんには知人から次々と電話がかかり、「すぐ避難して」と言われていた。だが、「朝ご飯を食べてからで間に合うだろう」とまず食事をとった。このわずかな時間が、避難の機会を奪うことになった。
しばらくして、掃き出し窓の向こうから濁流が押し寄せてくるのが見えた。「大変だ」と思ったときには、畳の上まで浸水。タンスや冷蔵庫などが倒れ、思うように動けなくなった。やっとの思いで掃き出し窓にたどり着いたが、すでに水位は高さ2メートルの窓の半分以上まで上昇していた。
「この窓を開けたら、水が一気に流れ込んでおぼれてしまう」。掃き出し窓の上にある幅約30センチメートルの小窓から体を出して、屋根の上によじ登った。
「ここで死んでしまうのかもしれない」と覚悟したが、堀川さんは諦めなかった。服を脱いで頭上を飛ぶヘリコプターめがけて振り回し、懸命に助けを求めた。
約2時間後、県警と消防のボートが堀川さんを救助。避難所で村上さんとも再会し、「みんなの意見に素直に従うべきだった。命が助かったことに感謝したい」と喜んだ。
■「とても住めない」
人吉市と球磨村では、倒れた電柱や濁流に巻き上げられた乗用車、自動販売機などがあちこちに散乱。依然、立ち入ることもできない場所が残る。八代(やつしろ)市では会地(あいち)公園の多目的広場が臨時のヘリポートとなり、自衛隊などに救助された人の中には、救急車で搬送される人もいた。
救助された同市坂本町の無職、宮坂茂盛さん(83)は自宅は被災を免れたが周囲の道路が通行できなくなり、妻や近所の人ら計7人で救助を待ったという。「自宅裏の崖が崩れないか心配だった。雨は怖いね」と話した。
特別養護老人ホームが孤立するなど被害が大きかった球磨村から3人の子供とともに避難所に身を寄せた岩竹美香さん(34)は5日、荷物を取るため自宅にいったん戻った。「屋根と天井が抜けて、とても住める状態ではなかった」と表情を曇らせた。
https://www.sankei.com/west/amp/200705/wst2007050024-a.html