2020年7月9日 14時49分(最終更新 7月9日 14時50分)
https://mainichi.jp/articles/20200709/k00/00m/040/094000c

 愛媛県では50年以上目撃情報がなく県内では絶滅したと思われていた国の特別天然記念物・ニホンカモシカの姿が同県東部の高知県境付近の山中で確認され、生息の可能性が高いことが分かった。野生生物の絶滅危険度をまとめた愛媛県レッドデータブック(RDB、2014年版)では「県内絶滅(EX)」と区分しているが、県は見直しの検討を始める。【木島諒子】

 県RDBなどによると、ニホンカモシカはウシ科で頭胴長70〜85センチ、体重30〜45キロ。雌雄ともに黒い円すい形の角がある。四国の個体は東北などの個体と比べて小型で毛色が黒いという。環境省が公表しているレッドリストでは、四国地方のカモシカ(ニホンカモシカ)を「絶滅のおそれのある地域個体群」と位置づけている。

 確認情報は18、20年の計2件。18年は、農林水産省四国森林管理局が別件調査で同県西条市の石鎚(いしづち)山系・伊予富士山中に設置したカメラに写っていた。20年は、隣接する同県新居浜市の別子山で、通りかかった会社員の車のドライブレコーダーに映っていた。いずれも成獣とみられるが、同一個体かどうかや雌雄は不明。

 ドラレコの方は、ニホンカモシカが道路上をしばらく走って逃げた後、脇の茂みに姿を隠すまでの様子が動画に収められていた。県自然保護課は、画像・映像による生息確認について「実際に生きている姿が確認できた」と高く評価している。

 これまでの県内発見例は、石鎚山系・高瀑(たかたる)方面で戦後間もないころに捕獲したのが最後で、毛皮は同県総合科学博物館(新居浜市)に保管されている。その後は、実際に姿が確認されたことはなかった。

 一方で、特別天然記念物でもあるニホンカモシカは法律で捕獲が禁じられており、見つけても近づかず、立ち去るよう県が注意喚起している。万が一、けがなどをさせてしまった場合や、動けなくなっているところを見た場合は速やかに県や自治体へ連絡するよう呼びかけている。

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