【ロンドン=佐竹実】英政府は14日、次世代通信規格「5G」から中国の通信機器最大手華為技術(ファーウェイ)を2027年までに排除することを決めた。周辺機器に限り部分的に容認してきたが、方針転換した。英中関係は香港国家安全維持法を巡り緊迫しつつある。蜜月だったビジネス関係も変化が必至だ。

政府が14日に開いた国家安全保障会議でファーウェイの完全排除を決めた。21年以降はファーウェイの製品の新規購入も禁止する。ダウデン英デジタル・文化相は同日の議会下院で、「5月の米国の追加制裁が決定的だった。ファーウェイの供給網が不確実になり、セキュリティーの安全性を保つことが難しくなった」と説明した。

与党・保守党内には24年の英総選挙前にファーウェイを完全排除すべきだとの声もあった。だが機器の交換には多大なコストがかかる。「排除を急げば、2400万人が携帯電話を使えなくなる可能性がある」(英通信最大手BTグループ)などの反発もあり、7年間の猶予を持たせた。

ファーウェイは14日、英政府の決定を受けて「英国のデジタル化を遅らせ、消費者の通信に関わるコストを増すものだ」と批判する声明を発表した。その上で「我々がより良いネット環境の構築に資することを英政府に伝えていく」とした。

米国はファーウェイの機器は情報漏洩の危険があるなどとして5Gからの完全排除を同盟国に求めたが、これまで英国は応じていなかった。通信網で使われているファーウェイ製機器の全ての交換はコスト面で現実的ではないとの判断だった。

1月には、利用者の個人情報などを扱う中核システムでは同社製品の使用を認めない一方、基地局(アンテナ)など周辺機器の35%に限って部分的に使用を認めるという折衷案を決めていた。

流れを変えたのは、米国によるファーウェイへの追加制裁の表明だ。同社は自社で設計した半導体の多くを台湾積体電路製造(TSMC)に生産委託する。米制裁は米国製装置で作る半導体の輸出を9月から禁じるとしている。TSMCから必要な部品を調達できずに、製品の安全を保てなくなる懸念が浮上した。

※中略

「我々は友人になりたいが、英国が中国を敵国とみなすならば、あなた方は結果を受け入れる必要がある」。中国の劉暁明・駐英大使は6日の記者会見でこう警告した。

2020/7/14 21:22 (2020/7/15 5:18更新) 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61516760U0A710C2EA2000/