36人の犠牲者を出した京都アニメーション放火殺人事件の発生から、18日で1年となる。長女津田幸恵さん=当時(41)=を亡くした父伸一さん(70)=兵庫県加古川市=は「娘は戻ってこない。悲しみに節目はない」と癒えない心の傷を口にする。ただ「おこがましいけれど」と前置きし、世界中のファンから愛される京アニについて「少しでも早く、生きている社員が元通り仕事に専念できるようになってほしい」と願う。(千葉翔大、小森有喜)

 幸恵さんは加古川市内の高校を卒業後、アニメの専門学校に進んだ。就職活動は京アニ一本に絞り、入社後は色彩や特殊効果を担当。年に2回ほど帰省するたび、幸恵さんの表情が明るくなっていった。「会社の家庭的な雰囲気が性格に合ったんちゃうかな」

 両親も温かく見守った。「クレヨンしんちゃん」「名探偵コナン」などのエンドロールに娘の名を見つけ、亡き妻と喜び合ったこともある。伸一さんが思わずテレビに見入ったのが、感情を持たない少女が愛を知るまでを描いた「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。美しい作画は「京アニらしい」と感じた。

 高校生の少年と聴覚障害がある少女の物語を描いた映画「聲(こえ)の形」は途中から見たため、内容が分からない部分があったという。「次に幸恵が帰省した時、聞こうと思ってたんですけどね」。直後に事件が起き、聞けずじまいとなった。

 4月下旬、現場となった第1スタジオの解体が終了した。「大勢の社員が傷つき、制作現場も制限されている。元のペースで作品を作るのは簡単じゃないはず」と津田さん。だが、大けがを負った人が復帰し、アニメ作りの環境さえ整えば「また、いい作品を生み出してくれる。それは間違いないでしょう」と話した。

7/17(金) 15:00
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