九州有数の繁華街である、鹿児島・天文館。6月27日夜、その一角の「山之口本通り」にある雑居ビルの4階の店に多くの客が詰め掛けていた。
店の名前は『NEWおだまLee男爵』(以下『おだまLee』)。南九州で知らない人はいない、人気ショーパブだ。

「すみません、そこ少し詰めてもらえますかー?」
夜10時過ぎになるとショーの時間に合わせて客がさらに増え、店のキャストたちがそう声を張り上げるほど店内は混雑していた。

客も店員も、マスクを着けている人間は皆無だった。

朝から雨が降り続け、店の出入り口はピタリと閉まったまま。ショーが終わって、夜12時を過ぎても、店からは客と店員の楽しげな声が響く。
まさか、この日、この場所で、日本最大級のクラスターが発生しているとはつゆも知らずに。

このショーパブ『おだまLee』で起きた大規模クラスターによる感染者の増加が止まらない。7月17日時点で、この店関連の感染者は、実に116名に上る。

「『おだまLee』を直接訪れた人以外にも、その家族など、2次、3次感染者が続々と判明しています。
店のキャストなど関係者の多くが入院や自宅待機中で、市や県による聞き取り調査もまったく進んでいません。
どこまで感染者が増えるのか、まったく読めない状況なのです」(全国紙記者)

国内最大級のクラスター発生事件はなぜ起きてしまったのか。

この『おだまLee』を経営しているのは、Rママ(仮名・48歳)。元は男性だが、20代後半で性転換手術を受けたという。
沖縄出身で、10代の頃は安室奈美恵や『SPEED』などを輩出した沖縄アクターズスクールに通っていた。

「Rママは『DA PUMP』のISSAさんや女優の知念里奈さんなど、アクターズスクール出身の人たちを始めとして、
芸能人の知り合いが多かったようです。芸人さんなども、よく店に遊びにきていました。

東京や大阪の水商売関係の知り合いも多く、県外からのお客さんも多かったようです。
ママは、地元紙でお悩み相談コラムを受け持っていたり、講演会にもよく呼ばれるなど、有名人でした」(Rママの知人)

『おだまLee』のキャストは、みな女装した男性か、性転換手術を受けた元・男性。店の中央にはステージがあり、
周りにボックス席が10個ほどある。店内には最大で50〜60人ほどが入ることができた。

料金は90分飲み放題付きで5000円。周辺の相場より割高だが、一日に3回開催されるダンスショーを目当てに客が詰め掛けた。
約30分にわたって、キャストが歌って踊り、客席の間を練り歩く。ショーが終わると、キャストたちがそれぞれの客席について接客する。
そうして少し経ったら、またショーが始まるという繰り返しだ。

「常連客ばかりのときはショーは無しで、客席でのトークのみという場合もありました。この店でキャストは客の隣ではなく、対面に座るというスタイルでした。
みんな酔っ払って声も大きくなりますし、いま考えると唾液の飛沫の量は相当だったと思います」(常連客)

ママが沖縄アクターズスクール出身ということもあり、ショーのダンスのレベルは高かったという。
ショーの内容も2〜3ヵ月に一回はリニューアルし、衣装を揃えるためにわざわざママが海外まで赴くなど、手の込みようは尋常ではなかった。

「歌やダンスのレベルが高いのはもちろんですが、それだけではなく、笑いの要素もあった。
ダンサーが手術で作った自分の胸をポロリと出して、『コレ、よくできてるでしょ?』と言って笑いをとっていました。

唇が柔らかいことをウリにしているキャストが、男性のお客さん全員にキスをするという『お約束』もありました。
もちろん男性客へのボディタッチも多かったです。お客さんも、この店のそういうノリを楽しみに来ている人たちばかりでした」(前出・常連客)

6月上旬に同店を訪れた客が振り返る。

「店に入って客もキャストも誰もマスクをしていなかったので驚きました。入店時に検温もしていませんでしたし、来店客の記録もつけていなかった。
店にはフェイスシールドがひとつだけ置いてありましたが、キャストや客がそれを持っておどけていました。ハッキリ言って、起こるべくして起きた事態だと思います」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74176