配偶者や恋人など親密な関係にある相手から振るわれる暴力、ドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence、DV=配偶者間暴力)。殴る、蹴るだけではなく、暴言を吐いたり、携帯電話やメールを細かくチェックして行動を制限・監視したりする精神的暴力なども含まれる。被害件数が増加傾向にあるDVとはどんなものなのか、逃げるにはどうしたらいいのか−。札幌弁護士会の多田絵理子弁護士に解説してもらいました。(聞き手 根岸寛子)

――DVとは、具体的にどういうものでしょう。

 一般的に配偶者や恋人など親密な関係にある相手から振るわれる暴力全般のことを言います。配偶者間での家庭内暴力は、これまで警察も「民事不介入」という原則から「家庭内の問題」として問題にされないことが多くありましたが、2002年にDV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)が施行され、警察に保護を求めることなどができるようになりました。

■DV防止法の対象は

 DV防止法の対象となるのは以下のケースです。

@ 婚姻関係にある男女(法律婚)
A 婚姻届は出していないが、事実上の婚姻関係にある同居の男女(事実婚または内縁関係)
B 離婚後または内縁関係を解消した後も引き続き暴力を受ける場合
C 「生活の本拠を共にする交際をする関係にある」男女(同棲しているカップルなど)
 
 ただし、婚姻や内縁関係にある間は暴力や脅迫を受けておらず、離婚や内縁関係解消後に暴力や脅迫が始まったという場合には、DV防止法の対象とはなりません。その場合は、刑法などにより対応することになります。

 DV行為は、身体的暴力、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力の主に四つに分類されます。これらの暴力は単独で起きることもありますが、何種類かの暴力が重なって起こることが多いです。

 DV防止法では、被害者を女性には限定していませんが、配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合、女性です。




■コロナで増加、国連も警告

――DV被害はどのくらいあるのでしょうか。新型コロナウイルス感染拡大による影響でDV被害が増加しているとも報じられています。

 3年に1度行われる内閣府の「男女間における暴力に関する調査」の17年度版によると、これまで結婚したことのある女性のうち、DV防止法の対象である配偶者などから暴力を受けたことが「何度もあった」と答えた人は13.8%。つまり7人に1人がくり返し暴力を受けた経験があるということになります。各都道府県に設置されている配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は増加傾向で、18年度は11万4481件(道内は2783件)と過去最多でした。

 また、警察庁の統計では、18年に検挙した配偶者間における殺人、傷害、暴行は7667件で、うち6960件(90.8%)が、女性が被害者となった事件です。この数字からも、DVの被害者の多くが女性であるということが、わかると思います。
 
 新型コロナウイルスの感染拡大による自粛ムードも少しずつ緩和されてきましたが、報道などによれば、コロナが影響したDV被害が増加したと言われています。休業や外出自粛で在宅勤務する人が増え、本人も慣れない中、家には休校中の子どもがいてストレスを感じたり、失業による生活や収入への不安からストレスが大きくなったりして、そのはけ口を配偶者や子どもなど、弱い立場の人にぶつけるケースが増えたようです。日本だけではなく、各国でもDVや児童虐待の増加や悪化が報告され、4月には国連の事務総長がDV増加に対する警告の声明を発表しました。

■「いい人」と思われている加害者も

 多くのDV事案を扱ってきましたが、DVの加害者に「これだ」というタイプがあるわけではありません。安定した職業に就いている人や、周囲から「いい人」と思われている人などが、実はDV加害者というケースも少なくありません。被害者も専業主婦(主夫)ばかりとは限りません。誰でも加害者、被害者になる可能性はあるのです。

――DV被害にあったら、どうしたらよいでしょうか?
 
 お近くの配偶者暴力相談支援センターや警察の相談窓口、弁護士、民間シェルターなど、様々な相談・支援の窓口があります。基本的に、DVの問題は、加害者と直接話し合って解決できるものではありません。第三者にできるだけ早く相談することが大事です。

続きはソース元にて
https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/442791?rct=n_life