25年度赤字7兆円超に倍増 高め成長前提でも 基礎的財政収支「黒字」絶望的
毎日新聞2020年7月31日 20時55分(最終更新 7月31日 21時38分)
https://mainichi.jp/articles/20200731/k00/00m/010/244000c

 内閣府は31日の経済財政諮問会議で、中長期の経済財政に関する試算を示した。財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)について、高めの経済成長を前提としたシナリオでも2025年度の赤字幅見通しが7・3兆円程度(前回1月試算は3・6兆円程度)に倍増する。政府が掲げる25年度のPB黒字化目標の達成は更に厳しくなり、目標そのものの是非が改めて問われそうだ。

 このシナリオの場合、PB黒字化を達成できる時期は29年度になると見込み、1月に示した前回見通しより2年遅れる。政府目標の25年度からは4年遅れる。PBは国と地方の政策経費に関して、借金に頼らずどれだけ賄えているかを示す指標。内閣府は年2回、経済成長率と財政の将来見通しをまとめた中長期試算を公表している。

 諮問会議で麻生太郎財務相は「25年度のPB黒字化目標を見直す考えはないし、黒字化は不可能ではない」と述べた。今回の試算は、社会保障などの歳出改革を反映しておらず、内閣府は「歳出改革を続ければ、3年程度の前倒しは可能だ」と説明する。

 ただ、高めの経済成長を前提としたシナリオ(成長実現ケース)では、国内総生産(GDP)の成長率が21〜24年度に実質で3%程度、名目で3%台後半としており、20年代後半も実質で2%程度、名目で3%程度になると見込む。第2次安倍政権下の実質成長率は年平均1%程度で推移しており、大きな隔たりがある。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は「コロナ禍で失った需要を一気に取り戻しても、その効果はせいぜい1〜2年程度。成長率の見立ても含めて甘い試算ではないか」と指摘する。

 試算で示されたもう一つのシナリオで、成長率が現状と同水準で推移すると想定した「ベースラインケース」では、25年度のPB赤字は12・6兆円に膨らみ、29年度になっても10・3兆円の赤字。黒字化は実現できず、更に厳しい数字になる。

 感染の「第2波」が拡大すれば、さらに財政再建が遅れる可能性がある。25年には団塊の世代が75歳以上になり、社会保障費の増大が見込まれており、財政健全化への道のりは更に厳しくなりそうだ。【村尾哲】