「嘘のような話……」

8月4日、そんな前置きをしながら始まった吉村洋文大阪府知事の「ポビドンヨード入りうがい薬がコロナに効く」という話。この会見後、薬局からうがい薬が消えたことは記憶に新しいだろう。

大阪府立医療機構「大阪はびきの医療センター」が、新型コロナウイルス陽性の軽症患者41人に対し、ポビドンヨードの成分を含むうがい薬で1日4回のうがいを実施したところ、唾液中のウイルスの陽性頻度が低下したとする研究成果を公表したのだ。

しかしこの会見に対し、専門家やSNSユーザーからは、「勇み足」「科学的根拠に欠ける」と批判の声も上がった。

ところが、時を同じくして、ポビドンヨード入りうがい薬を含む、市販の口内洗浄液で新型コロナウイルスを不活性化できるという研究結果が、米国感染症学会の機関紙「Journal of Infectious Diseases」で発表されていた。

独ルール大学ボーフム校所属の研究者らによるこの論文の中では、新型コロナウイルスの粒子と干渉物質を混ぜ合わせ、感染者の口内での唾液を再現。これに、ドイツ国内で市販されている8種類の口内洗浄液を加えた混合液を、容器ごと30秒間混ぜたのち、ウイルス量を測定。その結果、8種中3種の口内洗浄液を使った混合液からは、測定不能なほどウイルス量が低下していたという。

効果があった3種のうち、ひとつはポビドンヨードを主成分とする口内洗浄液だった。さらに、「塩化デカリニウム+塩化ベンザルコニウム」や「エタノール+精油」を主成分とする口腔洗浄液でもポビドンヨードと同様の効果が得られることがわかった。ちなみに後者の市販名は、日本でも販売されている「リステリン・クールミント」であった。

一方で、過酸化水素やクロルヘキシジン、オクタニジン二塩酸塩、ポリアミノプロピルビグアニドを主成分とする口内洗浄液では、ほとんど効果が見られなかった。

「この知見は、口腔洗浄によって唾液中のウイルス負荷が減少し、SARS-CoV-2の感染を低下させる可能性があるという考えを支持している。我々の知見は、患者や医療従事者の口腔内の除染や組織の健康状態を系統的に評価し、ウイルス感染を予防するために、臨床的な文脈で選択された処方を評価することを明確に提唱するものだ」と論文は主張している。

論文の執筆者で、独ルール大学ボーフム校の研究者トニ ・ マイスター氏は独メディアに「洗口剤でうがいをしても、細胞内のウイルスの産生を抑制することはできないが、感染症の最大の可能性がある、口腔と喉に潜むウイルスの負荷を短期的に減らすことができる」と述べている。

イソジンが品切れならリステリンでもいいということになるのだろうか……。とはいえ、これもまだ研究段階であり、判断はなんとも難しい。世界各国がしのぎを削る新型コロナウイルス対策だが、果たして突破口は発見できるのだろうか。

2020/8/19 11:06 (JST)
https://this.kiji.is/668637355662754913
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