増える”望まぬ妊娠”…処方箋必要な「アフターピル」薬局で買える日は


避妊に失敗したり性暴力を受けたりした場合に服用すると高い確率で妊娠を防げる緊急避妊薬。
海外では薬局で簡単に購入できるが、日本では医師の処方箋が必要だ。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で望まない妊娠の相談が全国的に増える中、
処方箋なしに薬局で入手できるよう求める声が高まっている。

「彼氏と毎日一緒にいて性行為をし妊娠したかも」 「自暴自棄になり複数の人と関係を持ってしまった」−。

若者の性の問題に取り組むNPO法人「ピルコン」(東京)には感染拡大防止のため学校の休校措置が取られた3月以降、
妊娠や避妊に関する10代からの相談が2倍以上に急増した。

染矢明日香理事長は「休校と親の不在によって子どもだけで過ごす時間が増えたことや自粛生活で不安が高まったことが影響しているのではないか」と分析。
「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院(熊本市)など各地の窓口にも10代の相談が増加しているという。

緊急避妊薬の市販化を目指し2年前から署名活動を続ける染矢さんらは「コロナ禍で先行きが見えない中、
意図しない妊娠を防ぐため早急な対策が必要」として「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」を立ち上げ、
薬剤師の指導の下に薬局で購入できるよう求める要望書と署名約6万7千人分を7月、厚生労働省に提出した。

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緊急避妊薬はアフターピルとも呼ばれ、日本では2011年に初めて承認された。性交から72時間以内に服用することにより8割程度の確率で妊娠を防ぐ効果がある。
吐き気などが生じることもあるが、副作用は少ないとされる。

世界保健機関(WHO)は18年、「意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性は緊急避妊にアクセスする権利がある」と勧告。
欧米を中心に90カ国以上で医師の処方箋なしに数百〜5千円程度で購入でき、無料配布している国もある。

だが日本では依然ハードルが高い。価格は自由診療のため1錠6千〜2万円程度と高額だ。

17年には厚労省の検討会で市販化が議論されたが「悪用や乱用の恐れ」 「性教育が遅れており時期尚早」などと見送られた。
昨年7月にはオンライン診療による処方が解禁されたものの、近くに医療機関がなかったり心理的な不安から受診が難しかったりする場合に限定された。

避妊法の普及啓発を行う「#なんでないのプロジェクト」が今年5月に行った調査では、
コロナ禍で妊娠の不安を感じた女性116人のうち緊急避妊薬を入手できた人はわずか17%。

福田和子代表は「薬が高額なことと産婦人科受診への抵抗感に加えて、コロナ感染への不安も薬の入手をあきらめた理由になっている。
オンライン診療は認知度も低く、クレジットカード決済が大半のためカードを持たない若者には利用しづらい」と指摘する。

染矢さんは「望まない妊娠を防ぐことは虐待の予防にもつながる。
従来の対面診療からオンライン診療、さらに薬局と選択肢を増やすことが大切。性教育の充実と両輪で進める必要がある」と話した。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/637511/