2020.08.20

ドイツ最大の食肉工場Tönnies社のトラック=2020年7月16日、ロイター
世界で新型コロナウイルスが猛威をふるって半年以上が経ちました。現在も収束の目処はたっていません。そんななかドイツでは「コロナ以前には見過ごされてきた問題」がコロナ禍により一気に明るみに出ています。

ドイツの消費者が求める「安い肉」のために搾取され続けた外国人労働者
ロックダウンも終息を迎え徐々に日常を取り戻せたかのように思えた今年6月、ドイツ北西部・ギュータスローにある食肉工場Tönnies社で1500人以上もの従業員が新型コロナウイルスに感染していることが発覚しました。当初、同社は記者会見で「工場で働くブルガリア人とルーマニア人が週末を利用して母国に帰り、週明けに仕事にすぐに復帰した」などと語り、あたかも同社で働く東ヨーロッパの労働者の「週末の行動」によって感染が広まったかのような印象を世間に与えました。しかし実際には東ヨーロッパの労働者の多くが長年にわたり同社で劣悪な環境のもと働かされており、それが感染の拡大につながったことが分かりました。

外国人労働者とTönnies社の間にはいくつもの下請け業者が入っていました。請負契約のもと外国人の手に渡るのはわずかな金額で、彼らにあてがわれた部屋は狭く、日本でいうタコ部屋状態でした。Tönnies社では最新の機械を使って一日に3万近い豚を屠畜し、豚肉における同社のドイツの市場占有率は30パーセントです。それにもかかわらず会社は労働者の勤怠管理のデジタル化を行っていませんでした。かねてより衛生上の理由から労働者には携帯電話や腕時計の職場への持ち込みは許されていませんでしたが、作業場のホールの壁には掛け時計が設置されておらず、労働者は時間を把握することができないまま残業させられた上に残業代が支払われないことが日常化していたといいます。Tönnies社が長年にわたり勤怠管理のデジタル化を図らなかったのは「記録に残すことなく外国人労働者に違法残業をさせるためだったのではないか」との疑惑が持ち上がっています。

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