中国地方の農家が、稲を枯らす害虫トビイロウンカに警戒を強めている。広島県が13日、22年ぶりとなる発生警報を県内全域に発令。山口、岡山両県も今月、相次いで警報を出した。各県やJAは必要に応じて追加の薬剤散布を求めるなど例年以上の防除を呼び掛けている。

 JA広島中央(東広島市)やJA全農ひろしま(広島市安佐南区)の職員たちが24日、東広島市西条町の約10アールの田んぼを訪れた。稲の根元をたたいて板に落ちたウンカの数を調査。1株当たり5匹いたら防除が必要なところ、20匹以上を確認した。田んぼを管理する下三永(しもみなが)農事組合法人の高尾昭臣代表理事は「心配だ。防除を増やすことも考えないと」と顔を曇らせた。

 ウンカは中国大陸から気流に乗って飛来し、雨と一緒に降って稲に定着する。今夏は長雨でウンカが例年以上に降り落ちた上、その後の高温で増殖も進んだとみられる。稲は養分などを吸い取られ、収穫を控えた時期に枯死する。田んぼにぽっかり茶色い穴が開いたように見える「坪枯れ」の原因となる。

 山口県の警報は2年連続。12年ぶりに出した昨年は、県農業共済組合によるウンカ被害の損失補填(ほてん)が496戸の3374万円に上った。2014年の600万円以降は最大で年43万円にとどまっており、19年の被害は際立った。作況指数は13年ぶりの「不良」だった。

 ウンカの薬剤散布は、穂が出る前と出そろった時期の2回が基本。広島県は警報に合わせ、必要に応じた3回目の防除を要請した。山口県は収穫期が迫った田んぼで、早めの稲刈りの検討を求める。JA広島中央は「管内に注意報が出た昨年でさえ防ぎきれず収量が減った。適切に防除しなければ、ことしは昨年以上に厳しくなる」と組合員への注意喚起に注力する。

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