安倍晋三首相(自民党総裁)が辞任表明した28日、後任を選ぶ「ポスト安倍」レースの号砲も鳴った。次期総裁候補として菅義偉官房長官の名が挙がる中、石破茂元幹事長や岸田文雄政調会長らを推す派閥のメンバーは緊急会合を開き、今後の対応を協議した。

 「(持病の)いい薬が出たので頑張っていたが、予算作りなどで迷惑をかけてはいけない。ここが潮時だと思った」

 首相は28日午後2時過ぎ、参院重鎮に電話をかけ辞任の理由をこう説明した。約1時間前に新型コロナウイルスの政府対策本部で新たな政策パッケージを決めたことを受け、一区切りついたと判断したようだ。同日午前には財務省幹部らとの打ち合わせに同席した麻生太郎副総理兼財務相を呼び止め、最初に辞意を伝えた。

 首相に近い自民党の稲田朋美幹事長代行は記者団に「予想もしていなかったので驚愕(きょうがく)している。経済や安全保障をしっかりと再生されたことに敬意と感謝の気持ちだ」と語った。

 約7年8カ月に及んだ「安倍1強」時代が終焉(しゅうえん)を迎えたことを受け、各派閥は緊急会合を開き、総裁選への対応を協議した。

 石破氏は、自身が会長を務める石破派(水月会、19人)のメンバーを国会内に集め、首相が辞任を表明した記者会見のテレビ中継を視聴した。終了後は、総裁選について記者団に「(出馬に必要な)20人の推薦人があれば、やらねばならないということではないか。遅くない時期に判断したい」と意欲を示した。

 石破派の幹部は「スタートの笛が鳴った」と述べ、総裁選では、課題である国会議員票の獲得が重要になると語った。

 岸田氏率いる岸田派(宏池会、47人)も所属議員が派閥事務所に集まった。岸田氏は記者団に「次を担う気持ちは変わっていない」と強調した。同派の小野寺五典元防衛相は産経新聞に「今後、具体的に総裁選びの手続きが決まっていく。その状況を見極め、岸田氏を支えたい」と語った。

 一方、麻生氏が率いる麻生派(志公会、54人)は28日夜、幹部らが都内の日本料理店に集まった。派内では河野太郎防衛相が出馬に意欲を示すが「まだ出る時期ではない」(幹部)との声も根強く、派が結束できるかどうかが焦点となる。

 「ポスト安倍」候補として茂木敏充外相や加藤勝信厚生労働相らを擁する竹下派(平成研究会、54人)は31日に会合を開く。茂木氏は総裁選への出馬意欲を記者団に問われ「皆とよく話し合いたい」と語った。

 首相の出身派閥の細田派(清和政策研究会、98人)も31日に総会を開催する予定だ。同派の下村博文選対委員長は記者団に「(総裁選には)推薦人が20人いれば出られる。仲間と相談したい」と語った。同派では稲田氏も総裁選に意欲を見せるが、幹部は「一致結束して動くことが重要だ」と述べ、首相や細田博之会長の意向に従う考えを示す。

 首相は記者会見で後継候補にこうエールを送った。

 「それぞれの政策を競い合う中において、素晴らしい方が決まっていくのだろうと期待している」

2020.8.28 21:14 産経新聞
https://www.sankei.com/politics/news/200828/plt2008280148-n1.html

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