遺伝子を組み替えた蚊のオスの卵がどっさり入った箱を各地に設置し、そこに水を注ぎ込むと、やがて7億5千万もの大量の蚊が湧き上がる。この計画がまもなくフロリダ州で行われようとしている。

 こんなことする理由は、病原菌を媒介するやっかいな蚊を抑制するためだ。

 今年6月、フロリダ州当局がこの計画を承認したが、今月、実施地域であるフロリダ州モンロー郡の当局も正式承認し、いよいよ実施される運びとなったようだ。

やっかいな病原菌を媒介する世界一の殺し屋

 蚊のメスは、血液を吸い、痒みをもたらすだけでなく、様々な病原菌を媒介するやっかいな生き物である。

 じつは人間を一番多く殺している動物は、サメでもライオンでも人間自身でもなく蚊なのである。「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」によれば、蚊は1年に72万5000人の人間を殺しているという。

 たとえば今回のターゲットである「ネッタイシマカ」は、デング熱・ジカウイルス・チクングニア熱・黄熱といった命にかかわる病原菌を媒介し、それを感染させる油断ならぬ相手だ。

 遺伝子組み替え蚊を作ったのはイギリスのオキシテック社で、米環境保護庁から承認も受けている。それでも、そうした蚊を大量に放つことに対する批判がないわけではない。

 もっとも懸念されているのは、遺伝子組み替え蚊と野生の蚊の雑種が誕生し、蚊に起因する病気がかえって増えてしまう可能性や、生態系に何らかの被害が出る可能性だ。

 環境保護団体は危険な「ジュラシックパーク実験」であると非難し、オンライン署名収集サイト「Change.org」には、アメリカを遺伝子組み替え蚊の実験場にすること止めるよう求める請願が、24万件近く(8/24現在)も寄せられている。

 また、一部の専門家からも科学的、倫理的懸念を表明している。

 オキシテック社は、そうした点は十分に調査されており、問題はないと反論。今の時点では、2021年と2022年にあわせて7億5000万匹の遺伝子組み替え蚊がフロリダキーズに放出される予定だ。

果たして本当に安全で効果があるのか?

 なお遺伝子組み換え蚊を利用した野生の蚊のコントロールは、これまでにもブラジルでジカ熱対策として実施されたことがある。これによって実施地域におけるネッタイシマカは85%も減少した。さらに中国広州市でも事例があり、ヒトスジシマカのメスが94%削減されたという。

 その一方で、ブラジル、ジャコビナでイエール大学の研究者が行ったフィールド調査では、野生種の蚊に、遺伝子組み換え蚊の遺伝子が混入していたという事例が報告されている。

 人々の懸念をよそに、オキシテック社は遺伝子組み換え蚊の放出を続ける予定で、来年にはテキサス州での実施も予定している。これについて、州や地元の承認はまだ得られていないが、連邦政府からの承認はすでにおりているそうだ
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