https://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/202009/0013659226.shtml

総合人材サービスのパソナグループ(東京)が、本社機能の一部を淡路島に移すことを決めた。
社員1800人のうち1200人が対象となり、大きな話題となっている。同社の南部靖之代表が神戸新聞社の取材に応じ、
その意図や今後などについて語った。主なやりとりは次の通り。

 Q 本社機能移転の狙いは。

 A コロナ禍は働き方、社会の環境、全てを変えた。東京でもできなくはないが、一番大事なのは企業の継続性で、
本社機能の分散化によるリスクヘッジをしなければならない。

 また、社員に自分の時間もない。今、若者はもうワークライフバランスを重視している。自分の趣味を生かす時間もないといけない。
音楽、農業をやりながら、ダブルキャリアで仕事をやればいいのにと思う。これからは豊かな人生と環境、企業の利益が、バランスよくあるべきだ。

 今までは東京と地方に格差があった。コロナによって、家にいても地方にいても、携帯電話とパソコンで仕事ができることが分かった。
先輩に聞かなくても、コミュニケーションを取らなくても家でできて、会社がきちんと回る。そうするとガバナンスの面から、待てよと。
交通費を払って、福利厚生で社員食堂をするなどしていた経費は莫大だった。経費はだいたい給与の1・8倍かかる。
パソナグループでも1・6倍かかる。持つ土地を半分以下に減らす。淡路の坪単価は安い。東京のうちのビルは高いから。

 Q 決断したタイミングは?

 A コロナで“ロックダウン”したとき。決断したのは8月だけど。5月末から6月ごろから言っていた。ここ淡路で、
社内の業務などの一部を外部委託する「BPO」をやろうと。5、6月にその思いは強まった。もちろんコロナで。

 Q 本社は、淡路市のどこにするのか。社屋を建てるのか?

 A 来年3月末に450人ぐらい来ますから。もう半年後。まずは住まいがいる。われわれは今、貸しビルを持っている。これから工事に入る。
1500〜2000坪あります。淡路のオフィスは淡路市のリゾート施設「夢舞台」に作る。住宅も何カ所も用意する。
450人は2カ所あれば十分入れる。

 Q 来春までに新たに2カ所、淡路市内に設ける?

 A それだけでは足りない。来年夏ごろに建物を作る。来年度中にさらにまた450人ぐらい来る。

 オフィスは淡路市内。住居も淡路市。1200人分で言うと、住宅は3、4カ所でいいだろう。何回かに分けて。
自社ビルには簡単なプレハブ的なものをこしらえて、デザインをよくする。そこにリモートオフィスを作ります。
自社ビルは来年夏ごろにできる。2022年春ごろには埋まります。約1200人のうち450人、また400人来て、最後に400人。
1200人ってすごい数。その家族もいますからね。

 Q 東京に生活基盤がある人もいると思うが。

 A そりゃ来たくない人もいる。でも、手を挙げている人がめちゃくちゃ多くて。パソナって特殊な会社。移動したくない人は来ない。
子どもを持つ社員の方が、来たがる人が多い。

 Q 役員は常駐するのか?

 A 常駐が多い。管理部門は4分の3とか。ほとんど来るし、来ている。淡路市の中に住宅も借りています。
これ、一番上にバーカウンターがあって、個人負担は1人数千円。借りている値段がめちゃくちゃ安い。

 Q 島への波及効果も大きい。

 A 島の雇用創出にもかなりつながる。地元でも採用する。高校を卒業したら都会に出て戻ってこないケースが多いが、淡路島は少ない。
だからUターンの人が相当多いんじゃないかな。人が増えれば、経済効果も大きいと思う。

 Q これから淡路島でどんな事業を展開していきたいか。

 A 今まではアニメやウェルネス、食、農業などをしてきて、これは続ける。IT化、デジタル時代に対応するための企業の変革。
BPOセンターもできる。電話を使った「インサイドセールス」もできるし、コールセンターも作れる。あとは農業とかいろんな技術を掛け合わせて
新しい社会を淡路島で作り、循環型社会などさまざま事業をやっていく。

 Q 南部代表は、淡路島に住んでいる?

 A 今年1月から。経営会議も淡路島で。家族は神戸にいたけれど、こっちに来ます。やっぱりね。何というか、
コロナとかいろんなことがあったのが大きい。あれがなかったら最終決断してなかった。これは事実。