台風10号の今後の進路や潮位によっては、九州沿岸部で高潮・高波が発生し、
広域で浸水被害が出る恐れもあるとして、専門家は早めの避難を呼びかけている。

高潮は、気圧が低い台風に引っ張られるように海面が上昇する「吸い上げ効果」と、
海岸に向けて吹く強風による「吹き寄せ効果」の二つの作用で潮位が高まる現象だ。

海上の気圧が1ヘクト・パスカル下がると、潮位は1センチ上がる。
早稲田大の柴山知也教授(海岸工学)によると、10号に伴う潮位上昇は、吸い上げ効果で約1メートル、
吹き寄せ効果で約5メートルに達する可能性があるという。

高潮のリスクが高いのは、台風に吹き込む風の影響を受けやすい南方に開けた海岸や、
遠浅の海など。特に九州は、農地を広げる干拓事業により、沿岸部に低地が広がる地域も多い。

佐賀県など4県に囲まれた有明海は、細長い海域の影響で干満差が最大約6メートルと日本有数の大きさで、
台風通過が満潮時と重なれば被害が拡大しかねない。

京都大の森信人教授(海岸工学)は「河川は水位上昇に数時間かかるが、
高潮は30〜60分で急速に潮位が上がる」と指摘し、安全な場所への早期避難を訴える。

一方、高波については、高さ15〜20メートルに達する可能性があると試算。
「風が強くなる台風の進行方向の右側に当たる地域や、外洋に面する離島では特に注意が必要だ」としている。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200905-OYT1T50247/