沖縄振興と基地問題は結果的にリンク(関連)している―。自民党総裁選に立候補を表明し、沖縄基地負担軽減担当相も兼任する菅義偉官房長官の記者会見での発言が波紋を広げている。政府は沖縄振興は基地問題と関係なく進める必要があるとの公式見解だが、あからさまに「アメとムチ」を容認する姿勢を示した形だ。沖縄の基地問題関係者は「明らかなどう喝だ」と憤っている。

 菅氏は2014年、新設された沖縄基地負担軽減担当相に就任した。2日の出馬会見では沖縄の基地問題について、米軍北部訓練場(沖縄県東村、国頭村)の返還などを挙げ「(負担軽減を)目に見える形で実現した」と強調。一方、翌日の官房長官会見では沖縄の振興策と基地負担の関係を問われ、「結果的にはリンクしているんじゃないでしょうか」と述べた。

 政府は沖縄振興を基地問題とは関係なく進めるとの立場で、国会でも繰り返し答弁してきた。だが、普天間飛行場(宜野湾市)の県外移設を求める翁長雄志氏が14年に知事に当選すると沖縄振興予算は減少。菅氏は16年の会見で、基地返還の進捗(しんちょく)状況によって跡地利用に必要な費用も変わるとして、振興予算と基地問題を「リンクしている」と初めて表明した。

■「首相よりひどい」

 今回の発言は、16年の方針転換を再び示した形だが、首相に直結する総裁候補という立場では重みが異なる。普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する沖縄平和運動センターの山城博治議長は「(移設を強行した)安倍晋三首相ですらこういう発言はせず、建前を守っていた。基地を受け入れなければ金は渡さないという脅しで、総裁候補である前に政治家として許されない」と指摘する。

■岸田氏は言及なし

 菅氏以外の総裁候補も基地問題と関わりを持つ。岸田文雄政調会長は外相として辺野古移設に関わったが、総裁選の出馬会見や政策集では沖縄について言及していない。

 石破茂元幹事長は13年、幹事長として辺野古移設を認めるよう党の沖縄県選出議員に迫った。だが最近は、辺野古を唯一の解決策とする政府方針を批判。総裁選ではホームページに載せた沖縄県向けの動画で「(辺野古移設は)粛々と進めるのではなく、県民の理解を得るために誠心誠意の努力をしたい」と語った。(鈴木誠)

北海道新聞 09/06 11:47 更新
https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/457467/