【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、少なくとも2023年末までゼロ金利政策を維持する方針を表明した。物価上昇率は「当面は2%超を目指す」とし、2%に到達するまで利上げを見送るとも宣言した。長期の低金利政策を確約する「フォワード・ガイダンス」を導入し、新型コロナウイルス渦からの景気回復を急ぐ。

16日のFOMCでは、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0〜0.25%のまま据え置き、事実上のゼロ金利政策を維持した。3月に再開した量的緩和政策も、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)も同400億ドルのペースで買い入れる。

同日の会合では、FRBの正副議長や理事、地区連銀総裁による参加者17人が、23年までの政策方針と景気見通しをそれぞれ提示した。13人はゼロ金利政策を23年末まで維持する考えを表明。3年強にわたって利上げを見送る長期の金融緩和がFOMCの中心シナリオとなった。マイナス金利政策の導入を検討する参加者はゼロだった。

声明文にはゼロ金利を解除する条件を3つ盛り込み、低金利政策を市場に確約する「フォワード・ガイダンス」を今回の局面で初めて導入した。ゼロ金利政策は(1)FOMCが完全雇用とみる水準まで労働市場が回復する(2)物価上昇率が2%に達する(3)一時的に物価上昇率が2%を緩やかに上回る経路に到達する――まで維持する。

フォワード・ガイダンスは、金融政策の方針を数値で示して長期の低金利政策を市場に確約する手法だ。前回、15年末にゼロ金利を解除した際の物価上昇率はわずか0.4%で、FRBは2%に到達する前に予防的に利上げするケースが多かった。声明文に利上げの条件を明示すれば、低金利政策が長く続くと強く判断できるため、投資家や企業家は資金調達がしやすくなる。

記者会見したパウエル議長は「今回、決定したフォワード・ガイダンスは強力で、家計や企業を支えるものになる」と強調した。FOMCの予測では、物価上昇率が2%に達するのは23年末で、同議長は「それまで政策金利を(ゼロのまま)据え置くのが適切だ」と明言した。

米景気については「急激な落ち込みから想定よりも早く回復軌道に戻ったが、水準は危機前より低く、先行きも不透明だ」と述べた。とりわけ米議会は与野党の対立で追加の財政出動が遅れており、同議長は「景気の水準を危機前に戻すには、直接的な財政の支援が必要だ」と訴えた、(。)

日本経済新聞 2020年9月17日 3:04 (2020年9月17日 5:54 更新) https://r.nikkei.com/article/DGXMZO63947100X10C20A9000000?s=5