米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について有識者が議論する沖縄県の諮問機関「万国津梁(ばんこくしんりょう)会議」が県に答申した提言が書籍化された。提言は政府が進める普天間飛行場の名護市辺野古への県内移設計画の見直しを求め、基地機能を本土の自衛隊基地に分散移転させて普天間飛行場の段階的返還を目指すとしている内容で、本土に問題提起している。

 書籍は「辺野古に替わる豊かな選択肢 『米軍基地問題に関する万国津梁会議』の提言を読む」(かもがわ出版)。万国津梁会議は3月、中国の軍事力向上を背景に米海兵隊が基地を固定化させず戦力を複数拠点に分散させる新たな戦略を描いていることから、沖縄に駐留する海兵隊の訓練を複数の本土の自衛隊基地に分散移転させるなどし、普天間飛行場の常駐期間を少なくして段階的に返還を目指すべきだと提案した。

 書籍には提言の答申を受けた玉城(たまき)デニー知事のインタビューも収録。玉城知事は「沖縄の米軍基地の整理縮小は、その機能を日米安保の観点からみてどこに展開していくかが非常に重要。米軍に対し、日本政府や沖縄がどのようにコミットしていくのか、お互いが参画していく協議の場で明確にしていくべきだ」と訴えている。

 提言に至った背景について、沖縄国際大准教授の野添文彬副委員長は「日米両政府と沖縄県にとって利益になる形で安全保障論を沖縄から提案することを重視した」と説明。琉球大准教授の山本章子委員も、最新の軍事戦略の議論が不十分だとして「日米両政府に先駆けて沖縄から最新の軍事戦略を踏まえた議論をすることは対話で主導権を取る意味で重要」としている。

 「かもがわ出版」編集主幹の松竹伸幸さんは「米軍の戦略に沿った形であれば『辺野古ではない』という問題提起が新しい。提言は『普天間問題は沖縄の問題ではなく、自分たちの問題だ』という大事な訴えとなっている」と話す。

 書籍には柳沢協二委員長と山崎拓元自民党副総裁との対談も掲載。1430円。【宮城裕也】

毎日新聞 2020年9月18日 13時53分(最終更新 9月18日 13時53分)
https://mainichi.jp/articles/20200918/k00/00m/040/096000c