週刊新潮 2020年9月17日号掲載  過度な対策は必要なのか?


社会や経済が大いにダメージを受けながら、それに甘んじざるをえないのは、命、とりわけ高齢者の命を守るためだったはずだ。
ところが日本人の死亡者数が、新型コロナの影もなかった昨年より少ないとしたら――。われわれは過度の対策をやめるべき転機にいる。

急な退陣表明と、その後の総裁選の行方にばかり関心が向かい、気づいた人さえ少ないようだが、
8月28日の会見で安倍晋三前総理は、新型コロナウイルス対策について、「重症化リスクの高い方々に重点を置いた対策へ、いまから転換する必要があります」
「医療支援も高齢者の方々など、重症化リスクの高い皆さんに重点化する方針です」と、方針転換を表明していた。

PCR検査を増やして無症状やごく軽症の感染者をあぶり出し、結果として増えた「感染者数」を、
特に東京都などでは知事が自ら発表。こうして独り歩きした「感染拡大」という言葉に、人々は不安をさらに募らせていく――。

そんな状況が続いてきたが、感染しても命を落とすどころか、すぐ治癒するのなら、感染自体を問題視する必要はないのである。

「風邪も同じで、あくまでも、こじらせて肺炎になって亡くなるのが問題です。目標は、いかに死者を増やさないかということ。
新型コロナに関してゼロリスクを求めて騒ぐのは、風邪をひくだけでリスクだと言っているのと同じです。たとえ感染しても治ればリスクではない、と割り切る必要があります」

と、経済学者でアゴラ研究所所長の池田信夫氏も言うが、現に、日本では大山鳴動して死者数は1300人台。
それなのに、社会や経済に回復不能な打撃を与える対策を取り続ける必要があるのか。

「週刊新潮」は毎週そう訴えてきた。そして、政府もようやく、感染そのものを問題視する政策を「転換」し、
重症化、ひいては死亡につながるケースに重点を絞ると表明したのである。

京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授が言う。

「多くの人が命を落とすような病気ではないと、この数字からも明確にわかります。また、高齢者も死亡リスクが高いとは言いきれません。
危険なのは基礎疾患がある場合です。あえて言えば、もともと死亡リスクを抱えていた人の死期が、新型コロナに感染して少し早まっただけの話。

総合的にみれば、新型コロナウイルスはインフルエンザより怖くないと思います。
それ以外にも、たとえば肺炎球菌に感染して亡くなる人が年間約2万人、入浴中に亡くなる人も約2万人いる。
インフルエンザのリスクはそれ以下で、新型コロナがインフルエンザ以下であるならなおさら、それほど怖いものではありません」

そうであるなら、われわれは早急に社会を平時に戻すべきだろう。医師で医療ジャーナリストの森田洋之氏の声も紹介する。

「インフルエンザでは関連死を含め、毎年約1万人が亡くなっています。しかし、ほとんどの人はそのことを知らず、無関心でした。
社会として無視してきたのです。だったら新型コロナも、同じくらい許容してもいいのではないでしょうか」

これから欧米のように死者が増えたらどうする、と心配する向きもあるかもしれない。
だが、3万人超が亡くなったフランスのデータが発表されており、昨年比で死者は、3月に約9100人、
4月に約1万7600人増えたが、5月は増減なく、6月は約400人、7月は約1500人、死者数はむしろ減っている。

アメリカでは、さすがに今年の死者数は昨年より増えそうだが、それでも増加分は、新型コロナによる死者数を大きく下回りそうだ。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/09190556/?all=1&;page=1