9/23(水) 8:41
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Web東奥

 新型コロナウイルス感染者の情報公開を巡り、青森県が今月新たに示した公表基準を適用すると、7月に青森市で感染が判明した開業医や接客業女性、警察官などのケースで職業、行動歴が非公表とされ、感染の可能性がある接触者が多数いることなど、県民が事態を把握するために必要な情報が伏せられたままとなる可能性が高いことが、県への取材で分かった。県内で初めて感染が確認されてから23日で半年。これまでの感染確認は35人、新基準が適用される9月は発生していない。

 県の基準は、これまで公表してきた職業を原則非公表とするほか、接触者を把握できる場合は行動歴も公表しない。他の感染者との具体的な接触状況も「個人情報に当たる」として非公表。市中感染の不安をあおらないよう「接触の有無」のみを公表する。独自に保健所を持つ青森、八戸両市も県の基準に準じる方針を示している。

 県が基準を策定したのは個人情報保護の観点から。感染者の少ない青森県では、情報が感染拡大防止の注意喚起に役立てられるよりも個人の特定に使われ、誹謗(ひぼう)中傷につながる傾向がある−として、必要最小限の情報に絞るという。

 新基準を、7月に青森市で感染が判明した開業医の例に当てはめると、「青森市保健所管内、60代男性、職業・行動歴は非公表、県外滞在歴あり」となる。実際は受診患者と健診を受けた生徒の約590人が健康観察の対象となったが、そのことにも触れられることはなかったとみられる。

 接客業女性(派遣型風俗店勤務)のケースでは「居住地は県外、20代女性、職業・行動歴は非公表、濃厚接触者30人程度」となり、どのような事態が起こっているのか分からないことになる。顧客リストがあるため接触者の特定は可能と判断し、県内での勤務状況や業態なども公表されなかった可能性がある。

 女性の客で感染が判明した警察官のケースも「青森市保健所管内、20代男性、職業・行動歴は非公表、感染者との接触歴はあり」程度の発表となる。同僚や利用した飲食店の従業員も把握できるとして行動歴は出されず、接触状況も非公表とされるため、女性の客だったことも明らかにならなかった可能性が高い。県警本部が公表しない限り、警察官で公務員であることも伏せられたままだったとみられる。

 東北6県で接触状況を非公表としているのは青森県のみ。岩手の担当者は「どういった状況で感染が起こっているかは重要な情報。伏せれば県民に不安を与え、隠せば隠すだけ探す人が出てくる」と話した。

 青森県以外で唯一、職業を原則非公表(同意があれば公表)としている福島県の担当者も「接触の場が家族や友人などの集まりか、職場や学校関係なのかといった情報は、感染がどこまで広がるリスクがあるのかを知る上で注目するところ。県民の安心にもつながるため、最大限答えている」という。

https://news.yahoo.co.jp/articles/33740aa1cdb601cc561f91aac228beed460689ec