ふるさと納税を巡る汚職事件が起きた高知県奈半利(なはり)町が今年7月23日、返礼品を寄付額の3割以下の地場産品に限る国の基準に違反したとして、全国で初めて対象自治体の指定を外された。今後2年間は制度に参加できない。指定取り消しから2カ月。町は再起を目指すというが、かつて全国屈指の寄付額で注目を集めた町を歩くと、返礼品業者の悲痛な声が聞こえてくる。

「返礼品のために買った機械をどうしたものか……」。カニクリームコロッケやアイガモのローストなどの返礼品を扱ってきた飲食店経営の60代男性は、真空パック用の機材や冷蔵庫を購入した。「一時は返礼品の取り扱いが売り上げの半分を占めたが、今はなくなってしまった」とうなだれる。大量の在庫を抱えて途方に暮れる海産物業者も。プリンやジャムなどを出荷してきたパン屋を営む60代女性は「うちは大きな損失はなかったが、倉庫を建てた業者もあると聞く。大変だろう」と心配そうに語った。町内では返礼品を取り扱う約40業者や農家などが制度に関わっていた。

高知市から約50キロ東の太平洋沿いに位置する奈半利町。人口約3100人の小さな町だが、ふるさと納税で2017年度に全国9位となる約39億円の寄付を集めて盛り上がりを見せた。だが、町職員らによる汚職事件が20年3月に発覚。これを契機に基準違反も明らかになり、町は指定を取り消された。

事件の中心人物は町の元地方創生課長補佐だった柏木雄太被… 残り912文字(全文1521文字)

毎日新聞2020年9月22日 18時45分(最終更新 9月23日 12時45分)
https://mainichi.jp/articles/20200922/k00/00m/040/152000c