千葉県東金市と、同市にキャンパスのある城西国際大、医療通訳事業会社「メディフォン」(東京都港区)の3者が、言葉や文化、習慣の違いから支援が行き届かない心配のある外国人家族の出産や子育てを支える環境づくりに取り組む。

 3者が、「保健事業における外国人家族支援に関する連携協定」を結んだ。外国人に対応した母子健康手帳の副読本や翻訳アプリを2021年春までに作成する予定。副読本は、妊娠時から就学前までの保健支援について難解な医療用語を使わずイラストを交えたやさしい日本語と英語で説明する。また保健事業で使う決まり文句や定型文を、市が20年4月から導入したメディフォン社の翻訳アプリに反映させ、保健師が相談者と面談する際に活用する。

 作成にあたり、同大は看護学部や国際教育センターなどで蓄積した保健や外国人対応の研究実績から助言する。また外国人や保健師らからの聞き取り調査を行い、大学での研究や学生の国際理解につなげたいという。メディフォン社は全国約2000カ所の医療機関に17言語による遠隔医療通訳サービスを行っており、外国人患者対応のノウハウが生かせる。同社の機械翻訳の機能向上にも役立てるという。3者は来年度以降も新たな課題解決でも連携していく。

 市によると、外国人の妊娠届け出数は17年度6人、18年度10人、19年度15人で、20年度は届け出全体の1割に達する見込みで急増している。日本人と同様に保健師が個別指導するが、言葉のニュアンスの差異や国による制度の違いなどで、きめ細かな支援が届きにくいという。医療用語を説明するのにも支障があり、従来の翻訳アプリでは注射の「打つ」を、「ヒット」と誤訳して伝わらないケースもあった。

 市の担当者は「現状はコミュニケーションが十分でないため何に困っているのかすら把握できていない。入り口部分で意思疎通が図られるようになれば、適切な助言やサポート態勢がとれる」と話している。【金沢衛】

毎日新聞2020年9月27日 09時38分(最終更新 9月27日 09時38分)
https://mainichi.jp/articles/20200927/k00/00m/040/027000c