NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」をめぐる不正出金問題で、地方銀行のIT戦略に暗雲が漂っている。超低金利などで経営環境が厳しさを増す中、地銀はITを活用した収益強化を模索してきたが、セキュリティー対策などのノウハウ不足が露呈したためだ。単独行での対応には限界もあり、体制強化に向け再編の呼び水となる可能性もある。
郵政グループ、信頼さらに失墜 不正出金でも対応後手

 ドコモ口座連携先で被害が確認された11行のうち地銀は9行を占める。いずれも銀行口座登録時に、1回限り有効な「ワンタイムパスワード」をスマートフォンに通知して入力を求める「2要素認証」を導入していなかった。金融庁が15日、安全対策が不十分な場合は新規登録と入金を止めるよう要請したところ、多くの地銀が停止を余儀なくされた。
 地銀関係者は「(金融とITを融合した)フィンテックを進めにくくなる」と事態を重く受け止める。超低金利や人口減少で収益が細り、地銀はデジタル分野を中心に異業種連携で顧客との接点拡大を模索。新型コロナウイルス禍で非対面サービスの充実も一層求められており、広がる連携先のリスクを適正に評価・管理できる体制構築は急務だ。
 しかし、セキュリティー対策を的確に判断できるIT人材は業種を問わず引く手あまた。人材・システム両面でコストが膨らむのは避けられず、今後、経営的な余力が対応を左右しそうだ。
 地銀再編を促してきた菅義偉首相は再三、「経営基盤を強化し、地域に貢献していく必要がある」と言及。政治主導による再編圧力も高まる。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の安岡勇亮アナリストは「統合を通じた店舗統廃合でコストを削減し、ITに人員を傾けられる余力をつくることも選択肢となる」と指摘した。

時事通信 2020年09月28日07時04分
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