組織の枠や地域を超え、各地のアイヌが連帯を強めている。根底には、2019年5月施行のアイヌ施策推進法(アイヌ新法)で明記されなかった先住権の問題がある。河川でのサケ捕獲権など具体的な権利の獲得を求め、横のつながりが広がりつつある。【山下智恵】

 「アイヌで連帯していくことが必要だ」。9月5日、北海道紋別市のアイヌ団体「紋別アイヌ協会」が同市内で開いた行事で、浦幌町のアイヌ団体「ラポロアイヌネイション」の長根弘喜会長(35)が言った。

 この日は、紋別市内を流れる藻別川河口付近でサケの遡上(そじょう)に感謝する伝統儀式「カムイチェプノミ」が行われ、民族衣装をまとった約30人が集まった。

 紋別アイヌ協会の畠山敏会長(79)は昨年9月、サケ捕獲は明治政府のアイヌ同化政策以来奪われた権利と主張し、道に申請せずサケを捕獲したことで道内水面漁業調整規則違反などの疑いで書類送検され、不起訴となった。この日、先住権を求める意思をつなごうと、札幌市、平取町、浦幌町のほか、東京都や神奈川県からもアイヌが駆けつけた。

 畠山会長は体調を崩し入院中のため、藻別川ではサケを捕獲せず、ラポロアイヌネイションが提供したサケを祭壇にささげた。同団体は8月、地元の川で生活のためにサケを捕獲することは「先住民族の権利に関する国連宣言」が認める先住権に当たるとして、サケ漁を禁じる法や道規則が適用されないことの確認を国と道に求め提訴している。

 長根会長は「裁判と無許可捕獲、畠山会長と方法は違っても先住権を求める気持ちは同じ。アイヌで連帯していくことが今後必要だ」と語った。

 先住権は日本も賛成し、07年に採択された「先住民族の権利に関する国連宣言」に明記されている。しかし、日本政府は先住権を有するアイヌの集団は存在しないとの立場で、アイヌ新法ではアイヌを「先住民族」と明記する一方、先住権には触れていない。

 儀式後、先住権について話し合う集会「ウコイタク(アイヌ語で『共に語ろう』)」が開かれた。首都圏のアイヌで文化継承に取り組む古布絵(こふえ)作家の宇梶静江さん(87)は「(アイヌは)狩猟をして成就したときに歌があって踊り、神と共にある。先祖のなりわいを取り戻さなければ」と話した。

 平取町二風谷の貝澤耕一さん(73)は宇梶さんらと共に、畠山会長の行動を支持し権利回復に向けた活動を行う「アイヌ(=ひと)の権利をめざす会」を立ち上げ、署名活動を展開。「アイヌは少人数で狩りをする狩猟民族だったためか、これまであまり地域を超えた連携がなかった。先住権を主張する各地のアイヌの連携を進め、大きな流れにしていきたい」と語った。

 相模原市から参加した島田あけみさん(64)も「先祖を語るために権利を主張し、強くならなければ」と話した。

ことば「アイヌ施策推進法(アイヌ新法)」

 2019年5月に施行された「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」。「全ての国民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」を目的に、アイヌを理由とした差別の禁止などを明記し、サケの捕獲事業が円滑に実施されるよう適切な配慮を自治体に求めている。ただ、先住民族が持つ資源や土地の権利である先住権には触れていない。

毎日新聞2020年9月29日 12時55分(最終更新 9月29日 12時55分)
https://mainichi.jp/articles/20200929/k00/00m/040/097000c
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