手取川の流れが岩盤を削ってできた白山麓の「手取峡谷」
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「湯涌温泉」「五箇山」「白山麓」
山村3地域 連携企画へ

 日本三名山の一つ、白山(二、七〇二メートル)の北部に位置する湯涌温泉(金沢市)、白山麓(石川県白山市)、五箇山合掌造り集落(富山県南砺市)の観光関係者が、誘客でチームを組んだ。世界遺産や温泉など観光資源はあるものの、金沢市街地や白川郷(岐阜県白川村)などに比べて知名度はいまひとつ。そこで、雪深い山岳地帯ならではの文化や歴史が似ていることに注目し、三本の矢となって観光地「白山」を発信する。(都沙羅)

 白山北部は雪深い山岳地帯で、養蚕や炭焼きなど山村特有の生活文化が培われてきた。湯涌や白山麓では古くから、温泉の持つ効果を利用して病気を癒やす「湯治」で知られる秘湯が点在。浄土真宗の信仰があつい白山麓と五箇山では、親鸞聖人の遺徳をしのぶ仏事「報恩講」が行われるなど共通点が多い。

 ただ、同じ北陸地方の和倉温泉(石川県七尾市)や金沢市街地、富山、長野両県を結ぶ山岳観光路「立山黒部アルペンルート」など人気観光地と比べると、集客力の弱さは明らか。

 実際、二〇一八年度に世界遺産の白川郷を訪れたのは約百八十万人(訪日外国人含む)だったが、同じ世界遺産の五箇山は七十万人。北陸新幹線の開業効果が続く金沢市街地の観光客数は同年度に千五十万人で、白山麓はその十分の一以下の九十五万人だった。

 「観光資源はあるはずなのに、いまひとつ発信できていない」。五箇山合掌の里活性化協議会の西敬一支配人(73)の悩みは、湯涌温泉観光協会、白山ろくスローツーリズム研究会と共通していた。

 「文化が似ているなら、点ではない面で観光圏をつくってみては」。悩める三地域をつないだのは、白山周辺の観光プランを企画支援する旅行大手JTBのシンクタンク、JTB総合研究所(東京都)の大津祥平研究員(29)のアドバイスだった。

 三地域は「白山観光圏」として連携することで一致。九月二十八日には五箇山でキックオフ会議を開き、三地域の関係者約二十人が互いの文化に理解を深め、連携して企画するツアーについて話し合った。

 コロナ禍で人気が高まっている近隣観光をターゲットに今後、北陸地方在住者向けの山村生活体験ツアーや、公立小中学校向けの教育旅行などを企画する方針で、「白山」の認知度向上のためキャッチコピーも考える。

 大津研究員は「北陸に来る目的が、白山そのものになることが目標」と力を込める。同研究会の北村祐子代表も「一地域だけでは思い付かないようなアイデアが出てくるかもしれない」と期待を寄せている。

中日新聞 2020年10月4日 05時00分
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