【学術会議問題】北の核完成と中国の千人計画軍事貢献、自衛隊の防衛研究へのイジメ 欧米留学と学会で出禁の可能性 八幡和郎氏 2020/10/06

■菅首相は「学術会議の問題点」正々堂々と説明するべきだ

 菅義偉首相が、科学者で構成する政府機関「日本学術会議」が推薦した新会員候補のうち、6人の任命を見送った問題が、秋の臨時国会の焦点となりそうだ。政府は説明責任を果たすべきだが、年間10億円もの税金が投入される同会議の存在意義を問う声もある。
元通産官僚で評論家の八幡和郎氏が緊急寄稿した。

 国公立を含む日本の大学は、防衛のための研究に協力することを拒否し、自衛隊員の大学や大学院への入学まで排除・制限するという暴挙を平気で行っている。一方で、外国の軍事研究への協力には無警戒である。
 自民党の甘利明税制調査会長は8月6日のブログで、中国が世界から技術を盗み出そうとしていると、米国で大スキャンダルになっている「千人計画」に、
日本学術会議が積極的に協力していると批判している。北朝鮮の核開発にも、日本の大学の研究者が貢献したと疑われているくらいだ。

 文科省をはじめとする政府機関は、この状況を放置してきた。
だが、米国と中国の対立が激化するなか、日本の企業、大学、研究機関、さらには研究者個人に至るまで、無神経でいると世界の研究網から排除されたり、留学や学会のためのビザも拒絶されかねない。

 日本学術会議は「軍事目的のための科学研究を行わない」という声明を1950年と67年、2017年に出した。これが、大学などでの不適切な方針を後押ししてきた。
 これらの活動は、学術会議の本来の目的から逸脱している。時代にも合わないし、組織運営も時代に合わなくなっており、制度の全面見直しをすぐ行うべきところだ。

 こうしたなか、政府が学術会議の自浄作用を期待するために、内閣法制局の意見も踏まえて、新会員候補の一部の任命を見送ったのは、何ら問題とされることではない。
 ただ、東京高検検事長の定年延長問題でも「司法改革の必要性」を国民に訴えずに、
人事でだけ控えめに政府の意見を反映しようとするから、「司法介入だ」という見当外れの批判を受けた。

 今回も「学術会議の問題点」を国民に訴えずに、
先例と違う人事のやりかたをしたので、守旧派の付け入る隙を与えている。
 元文科事務次官の前川喜平氏は、政府の専権事項である審議会委員の任命について、
官房長官時代の菅首相に事務方の案を覆されたと批判している。
仲間内で後任者を決めることができるのでは、時代に合う改革はできなくなるし、
「国民の意思を政策に反映する」という民主主義の根幹も維持できなくなる。

 官房長官の立場では、人事をテコに意見を反映させるのも合理性があるが、
いまや首相なのだから、国民に考え方を示し訴える方がいいのではないか。今
回の件もまず、学術会議の現況を先に批判してから同じことをすれば、
国民のほとんどは支持した案件 であるし、すぐにでも正々堂々の説明をしてほしい。