新型コロナウイルス感染拡大に絡み、キャバクラ店での副業を理由に雇用契約を打ち切るのは無効だとして、群馬県高崎市の20代女性が近く、同市のスポーツジム運営会社に対し、従業員としての地位確認を求める労働審判を前橋地裁に申し立てることが7日、分かった。女性の代理人弁護士によると、ジム側は「副業先での感染防止対策が不十分」としているが、女性側は風当たりの強まる“夜の街”での副業に対する「一方的な職業差別だ」と主張している。

◎スポーツジムに5年勤務 9月で契約打ち切りと通知
 代理人弁護士によると、女性は2015年7月にスポーツジムに入社。事務職として働き、6カ月ごとに雇用契約を更新してきた。幼児1人を育てるシングルマザー。副業として同市内のキャバクラにも勤務し、生計を立てている。ジムにはキャバクラでの副業を伝えていた。

 一方、ジム側は今年7月末、「感染防止対策が取られていない『接待を伴う夜の飲食店』での勤務が確認された」として、9月15日で契約を終了すると女性に通知。給与の60%の休業補償を支払う旨と8月以降の出勤停止を求めたという。

 女性はその後、有期雇用契約の通算期間が5年を越えた労働者に認められる労働契約の無期転換申込権を行使。「期間の定めのない労働契約となった。出勤停止命令は不当だ」と訴えたが、ジム側の対応が変わらなかったため、労働審判の申し立て準備をしている。

 女性は「夜の店で働いている従業員がいると不利益になるからクビにしたいように見える。まさに差別で、不合理」と憤る。親からの多少の援助はあるものの、1人で子どもを育てるには、収入減で生活が苦しくなるという。

 代理人の高山雄介弁護士は「ジムには接客しない業務もあるにもかかわらず、業務を変えるなど他の方法を検討していない。感染リスクが高いという理由で、安易に従業員を排除するのは問題だ」と強調。「従業員の生活や命を守る立場の企業がこうした対応をするのは許されず、慎重な手続きが必要であることを浸透させたい」としている。

 上毛新聞の取材に、スポーツジムの運営会社は「担当者がいないので答えられない」としている。

◎風俗業 支援求め提訴の動き広がる
 新型コロナウイルスを巡っては、感染への不安から患者や医療従事者、その家族らへの「コロナ差別」が社会問題となっている。風俗業などは公的な支援対象から除外されるなどし、事業者が他産業と同等の支援を求め、国などを提訴する動きも出ている。

 関西地方でデリバリーヘルスを営む企業は9月、持続化給付金の支給を求めて国などを提訴した。最大で中小企業に200万円、個人事業主に100万円が支給されるが、性風俗事業者は除外となった。梶山弘志経済産業相は5月の参院予算委員会で「社会通念上、公的支援の対象とすることに国民の理解が得られにくい」と説明した。

 30代の女性経営者は「きちんと税務申告し、法律を守ってきたのに」と訴え、「性風俗業に負わされた烙印らくいんや差別が生まれる原因は何なのか。世の中の人にも考えてほしい」と話している。

 群馬県内でラブホテルを経営し、同じく支援対象から除外された市東剛さん(61)は「国は性風俗で働く人の姿が見えていない。一石を投じる勇気ある訴訟」と強調する。

上毛新聞 [2020/10/08 06:00]
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/245732