休業手当を受け取れない労働者を国が直接救済する「休業支援金・給付金」を巡っては、制度の対象外になっている大手飲食店などの「大企業」の非正規労働者が、制度のはざまで置き去りになっている問題も指摘されている。(岸本拓也)

◆「企業からも国からも守られない」
 「企業からも国からも守られない状況に自分がなるなんて…」。首都圏の大手カフェチェーンでアルバイトとして働く30代の女性は明かした。
 緊急事態宣言を受け、カフェが入居する商業施設が4月から5月にかけ休業したため、女性は6月の施設の営業再開まで休みを余儀なくされた。毎月10万円ほどの収入は途絶え、「子どもの養育費の負担もあって生活は苦しい」と話す。
 カフェの運営会社に休業手当を求めたが、会社は「入居する施設の休業は会社の責任ではない」として拒否した。休業支援金も、飲食店の場合は「資本金5000万円以下」か「常時雇用者50人以下」の中小企業で働く人が支給対象。女性の勤め先は「大企業」扱いのため、申請できなかった。

◆「大手は資金余力がある」と言うけれど…
 別の大手居酒屋チェーンで働く20代の男性も休業手当が支払われず、「わずかな貯金を崩して生活しているが、不安でいっぱいだ」と打ち明ける。
 大企業を対象外とする理由について厚生労働省は「大手は自社で休業手当などを支払える資金余力がある」と説明する。企業に休業手当の支払いを促すため、今年3月からは、雇用調整助成金の対象に非正規労働者も加え、その後、大企業への助成率も2分の1から最大4分の3に拡充した。
 ただ、飲食業界は一般的に他業界の企業に比べて内部留保が少ない。コスト増を避けるため、アルバイトなど非正規従業員への休業手当の支払いを拒むケースが増えている。
 個人加入できる労働組合「飲食店ユニオン」には7月以降、休業手当の未払いを巡り大企業労働者からの相談が30件以上あった。多くは大手飲食チェーンの非正規労働者で休業支援金も受け取れず、制度のはざまで補償を受けられない状況に置かれている。

東京新聞 2020年10月9日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/60614