https://news.livedoor.com/article/detail/19052376/

ワタミ株式会社の労働問題に関する告発が続いている。10月2日、「ワタミの宅食」営業所の所長が、
労働基準監督署からの残業代未払いの是正勧告、月175時間を超える長時間労働、上司による
タイムカードの改ざんを次々と公表したのだ。

「ホワイト企業」宣伝のワタミで月175時間の残業 残業代未払いで労基署から是正勧告

ワタミがホワイト企業になれなかった理由は? 勝手に勤怠「改ざん」システムも

なぜ長時間労働を受け入れてしまったのか
 
Aさんは長時間労働の末、昼夜の感覚がなくなり、「このまま寝たら、もう目が覚めないのではないか」
と恐怖を抱きながら生活するほどだった。「あのまま働いていたら、死んでいた」とAさんは断言する。
現在は、精神疾患を発症し、労災申請をしながら休業中だ。

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厚労省て゛記者会見したAさん c?文藝春秋

しかし、Aさんは命の危険を感じていながら、なぜ過酷な仕事を続けてしまったのだろうか。
その背景には、労働者の意識に働きかけ、過酷な労働を受け入れさせてしまう、ワタミによる「思想教育」のシステムがあった。

ワタミの宅食の「社会貢献」

「こんなにいい仕事をしているんだから、苦しくても頑張ろう」

「苦しいことも、苦しくない。むしろ自分の力になる」

Aさんは過重労働の最中、そう自分に言い聞かせていた。

実際、Aさんはワタミの宅食の仕事に「誇り」を感じていたという。確かにワタミの「宅食」に「社会貢献」と言える部分がある。
ワタミの宅食には、食事の調達が難しい高齢者に、定期的に安く食事を届けるというコンセプトがある。
Aさんの営業所の届け先も、そうした人たちばかりだった。

隔日でデイサービスに通い、隔日で家にいるときの食事に困る一人暮らしの高齢者。
毎日昼食用と夕食用の2食を頼んで、ワタミの宅食しか食べていない高齢者、障がい者や、親を介護している人……。

苦しい生活の事情によって、食事に手間や時間、お金をかけられず、ワタミに頼らざるを得ない様々な利用者がいた。
それまで介護や教育現場で働いてきたAさんにとって、社会や地域のためになる宅食の仕事は、非常にやりがいの感じられるものだった。

だがそれらの「支援」を通じて無理やり利益をあげようとすれば、長時間労働や低賃金による労働者の犠牲によって
支えられることになってしまう。いわば「貧困・ブラック企業ビジネス」とでもいえようか。

Aさんも当初、仕事のやりがいと過酷な労働とは分けるべきものだと冷静に考え、業務のつらさについてはワタミに不満を抱いていた。

しかし、劣悪な労働条件は、Aさんの頭の中ではいつしか問題とはならなくなっていた。その変化をもたらしたのが、
ワタミによる「思想教育」だったと、Aさんは振り返っている。

「仕事を、お金を得るための手段なんかにしてはいけない」

「365日24時間、死ぬまで働け」

この言葉をご存知の方も多いだろう。渡邉美樹氏の過去の30年以上に渡る文章を抜粋して編集した400ページにも及ぶ「理念集」
という書物に記載されていた言葉である。Aさんは入社直後に会社から「理念集」を渡され、肌身離さず持っているよう言われた。

現在は批判を受けて、「死ぬまで働け」などの極端な表現は削除されている。それでもAさんが手渡された「理念集」(2016年度版)に
削除されずに残っていた、印象的な表現の一部を引用しよう。

〈私は、仕事はお金を得る為だけの手段とは考えていません。仕事とはその人の「生き方」そのものであり、「自己実現の唯一の手段」
であると信じています。だから新卒のセミナーでも、時代遅れはなはだしいと言われつつ、「365日24時間働こう」と言うのです〉

〈私も会社説明会で、「仕事とは生きることそのものなんだ。仕事を、お金を得るための手段なんかにしてはいけないんだ。
仕事を通して人間性を高めよう」と訴えています〉

※以下、全文はソースで。