イノシシの生息域が北に広がり、越冬するのが難しいとされてきた東北地方で捕獲数が増えている。東北6県の2019年度の捕獲数は4万3885頭となり、5年間で2倍以上に増えた。地球温暖化や、個体数の増加などが影響しているとみられる。イノシシは農作物に食害を与えるだけでなく、豚熱の感染源となる恐れもあり、各県とも警戒を強めている。
温暖化影響か

 6県の捕獲数は15年度に2万701頭で、この5年間で2万3000頭以上増えた。イノシシは冬に30センチ以上の積雪が70日以上続く地域だと、餌となる植物を見つけられず越冬が難しいため、生息地の北限は宮城県とみられていた。

 しかし、19年度になって本州最北端の青森県で3頭が捕獲された。県によると、17年度から目撃情報が増えているという。秋田県も5頭だが、16年度以降、捕獲が増えている。山形県は増加幅が大きく、15年度比8・7倍の2002頭になった。岩手県も同8・6倍の346頭に上る。

 6県中、捕獲数が最も多い福島県は同1・9倍の3万738頭。2番目の宮城県も同2・1倍の1万791頭と、軒並み増えている。環境省は「個体数が増えて活動範囲が広まったことに加えて、地球温暖化の影響で越冬しやすい環境が整った可能性がある」(鳥獣保護管理室)とみる。

 農作物の被害額も増えている。農水省の調べによると、18年度の東北6県のイノシシ被害額は2億7156万円。3年連続で2億円を上回る。

 豚熱対策も急務となっている。福島県で9月、豚熱に感染したイノシシが見つかった。これを受け、福島県と、隣接する山形、宮城両県が飼養豚の予防的ワクチン接種推奨地域となり、ワクチン接種が始まった。

 推奨地域でない岩手、秋田両県も、「病原菌を持ち込ませないことが重要」(岩手県畜産課)と、農場の消毒をはじめ養豚農家に飼養衛生管理基準の徹底を促し、警戒を強めている。

 岩手県では個体数管理を重視。効率的な捕獲を目指して行動範囲の調査を始め、わなの設置場所などに反映させる方針だ。秋田県でも南部の宮城、山形両県に接する地域での捕獲を強化。わな数の増加を進めている。
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