欧州連合(EU)を離脱した英国のジョンソン政権が、英仏海峡にフェンスの「浮く壁」を築き、欧州大陸からの密航者を阻止する案を検討している。上陸者を南大西洋の施設に閉じ込める計画も浮上。移民に厳しい世論の支持拡大を狙う強硬策とみられるが、人権軽視との批判が出ている。

 「壁」の設置は英内務省が立案。9月半ば、「密航者が乗ったボートを完全に阻止するために、海上フェンスや水力技術を利用する」可能性を、船舶港湾業界団体に打診した。そのやりとりのメールを入手した英フィナンシャル・タイムズ紙が特報して判明した。

 タイムズ紙は「(米国境の壁建設を主張した)トランプ流の政策」と論評する。同紙によると、放水銃で波を起こして密航船を対岸のフランス領海に押し戻す手法も検討。しかし、転覆して英海上警備当局が殺人の罪に問われる懸念からあきらめたという。

 英国では、EU離脱が実現した今年1月前後から、農作業や介護サービスに従事していたEU各国の労働者が帰国。空白となった労働市場をあてに不法移民の入国が相次ぎ、今年は8月までで約5千人に達し、昨年1年間の1890人をすでに上回った。密航業者は1人あたり500〜4千ユーロ(約6万〜50万円)で請け負うという。

 英パテル内相は4日開かれた保守党大会で演説し、「違法に来る人々は追い返す。自由移動は終了だ」と断言した。国会議員団には「彼らはすでにフランスにいるのだから、保護を受けたければ仏政府に頼めばいい」と説明したという。

 英内務省はまた、上陸した密航…(以下有料版で,残り556文字)

朝日新聞 2020年10月16日 8時00分
https://www.asahi.com/articles/ASNBH35W7NB4UHBI02L.html