10/28(水) 8:09
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 新型コロナウイルス感染を巡る誹謗(ひぼう)中傷が後を絶たない。「誹謗中傷をしないで」と、青森県を含む全国自治体のトップが呼び掛ける中、インターネット上の書き込みを職員がチェックしたり、県条例を制定し差別を禁止したりするなどの対策に乗り出している県がある。書き込みの削除など具体的な対応につながっているケースもある。

 8月、私立高校サッカー部の寮を中心に100人近いクラスター(感染者集団)が発生した島根県。ネット上には生徒を特定する書き込みや顔写真の無断掲載、中傷が多数広がった。

 新型コロナ感染拡大前から投稿サイトなどの監視を強化していた同県は、人権同和対策課の職員5人ほどが当番を決め、ほかの業務をこなしながら書き込みをチェック。クラスターの際には、対象者が多く、被害者自身の申告は難しいと判断して、法務省の人権侵犯事件調査処理規定に基づき13件を松江地方法務局に行政通報した。その後、法務局がプロバイダーに削除要請し、県が確認しているだけで3件の削除と1件のモザイク処理につなげた。

 鳥取県は8月、臨時県議会でクラスター対策などに関する条例を制定。「誹謗中傷、著しく拒絶的な対応、心理的外傷を与える言動または不当な差別的取り扱いをしてはならない」と明記し、中傷被害に遭った人を県が支援することを盛り込んだ。

 「鳥取は人口が少ないため感染者が特定されやすく、中傷が多くみられたため対策が必要になった」と同県保健衛生課の担当者。さらに弁護士会と警察、法務局と共同行動宣言を採択し、連携して中傷を防ぐ取り組みを進めることを申し合わせた。

 長野県は新型コロナの中傷に対する専用電話相談窓口を8月に設置。9月には県や県教育委員会、経済団体、PTAなど15機関で「誹謗中傷等からみんなを守る共同宣言」を採択した。

 7月下旬まで全国唯一の「感染ゼロ県」だった岩手県。初の感染者が出た企業が中傷の標的になると、達増(たっそ)拓也知事は会見で「犯罪に当たる場合もある。鬼になる必要性もあるかもしれない」と、中傷を許さない姿勢を明確に打ち出した。

 同県広報広聴課は、県公式ツイッターの中傷の書き込みを監視し、見つけた場合は画像を保存。担当者は「県が監視していると分かってもらうことで、書き込みを抑制する狙いがある」と話す。県民の意識啓発を目的に、新聞広告も数回出している。

https://news.yahoo.co.jp/articles/acb018944ec3e0fe9c95ae0c9a2f2e33268084be