文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員


欧州で新型コロナウイルスの感染者が急増し、フランスやドイツなどで都市封鎖(ロックダウン)の再実施が決定された。

米国でも中西部を中心に感染拡大が続いており、欧米では「第2波」が襲来したとされている。

日本でも感染者数が再び増加傾向にあり、メディアは「欧米の動向は『対岸の火事』と受けとめてよいのか」と警鐘を鳴らし始めている。



「第1波」の時も同様だった。欧米での死者数が急増する状況をメディアが煽ったことで、
「社会的同調圧力」が高い日本では国民が必要以上に萎縮してしまったが、また同じ失敗を繰り返すことになってしまうのではないかと筆者は心配している。

今回のコラムでは新型コロナをめぐる現状についておさらいをしてみたいと思う。

まず第一に指摘したいのは、日本での人口当たりの死亡率は欧米の数百分の1のままで推移していることである。

山中伸弥京都大学教授が命名した「ファクターX」は健在なのである。筆者はファクターXについて次のように考えている。

人間の体の中にウイルスなどの病原体が侵入すると、体内でさまざまな白血球が働き、Bリンパ球で「抗体」がつくられて病原体を排除する。
これが「液性免疫」と呼ばれるものであるが、これ以外にもウイルスに感染した細胞を直接攻撃する「細胞性免疫」もある。

Bリンパ球でつくられる抗体の寿命が短いことがわかり、ワクチンの有効性が疑問視されているが、
新型コロナを撃退する際に重要な役割を演じているのは、Tリンパ球による細胞性免疫だということがわかってきている。

さらに「交差免疫」という現象も注目を集めつつある。ヒトはウイルスに感染すると、リンパ球がそのウイルスの特徴を記憶する。

次に類似のウイルスにさらされると、速やかに液性免疫や細胞性免疫が再活性化されてウイルスを撃退するのである。

これにより、類似のウイルスにかかりにくくなり、仮にかかったとしても軽症で済む。

このような免疫反応を「交差免疫」と呼ぶが、新型コロナウイルスでも同様の現象が起きている。

抗体が消えたとしても心配する必要はないのである。

これまでのコロナウイルスの流行は、東アジア地域に限られてきた。
最初のコロナウイルスは1960年代に発見されている。長期間にわたりコロナウイルスと共存してきた東アジア地域では、

新型コロナに対する交差免疫を有する人の割合が多いことから、死者数が抑えられてきたというわけである。

東アジア地域以外の人々にとっては、新型コロナは100年前のスペイン風邪(推定5000万人が死亡)と同様非常に危険なものである可能性が高い。

米国と中国のチームは「新型コロナの致死率はスペイン風邪よりも高い」としている。

「新型コロナウイルスの感染拡大は今後1年以上続く」との見方が出ているが、
日本をはじめ東アジア地域の人々にとっては、新型コロナは「少し感染力の強い風邪」であり、
基礎疾患(糖尿病、高血圧、腎臓病、がんなど)を抱える人や高齢者を重点的にケアするという対策で十分である。
https://biz-journal.jp/2020/10/post_187996.html